「AIエージェント」という言葉を、ニュースや社内の会議で聞く機会が増えました。ChatGPTのような生成AIと何が違うのか、自分の仕事に関係があるのか、勝手に何かをされて困ることはないのか、と気になっている方も多いと思います。
結論から言うと、AIエージェントとは、人が目標を伝えると、AIが手順を自分で組み立て、検索やアプリなどの道具を使いながら作業を進めるしくみです。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)(2026年3月31日公表)は、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定めています。
質問に答えるだけの生成AIのチャットとの違いは、「行動まで任せられる」ことです。そのぶん、何をどこまで任せ、どこで人が確かめるかを、使う側が先に決めることが大切になります。
この記事で分かることは、次のとおりです。
- AIエージェントの意味と、生成AI・チャットボット・RPAとの違い
- AIエージェントが動く仕組み(頭脳・道具・記憶・計画)と種類
- 国内の企業や自治体が公表しているAIエージェントの活用事例
- 主なAIエージェントのサービスの違い(2026年9月時点)
- メリット・デメリット、リスク、よくある誤解
- 任せてよい仕事の見分け方と、始める手順・チェックリスト
サービスの名前や提供の範囲は、数か月で変わります。この記事の情報は、特に断りがない限り2026年9月時点で公式ページを確かめたものです。
AIエージェントとは?意味と生成AI・チャットボットとの違い
まず、AIエージェントという言葉が何を指すのかを、公的な定義と各社の説明から整理します。
AIエージェントの意味:目標を伝えると、手順を考えて作業を進めるAI
AI事業者ガイドライン(第1.2版)では、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」としています。同じガイドラインの注には、「自律」は高度な自律状態だけでなく、ある程度の自律性を持つものも含む、と書かれています。
つまり、何もかも自分で決めて動くAIだけが「AIエージェント」ではありません。人の指示を受けて、いくつかの手順を自分で選んで進めるものも含まれます。
総務省の令和7年版 情報通信白書も、定義は企業ごとに違うとしています。そのうえで、目標や言葉での指示に対して、自動的にタスクを決め(必要なら細かく分け)、処理を実行するものがAIエージェントと呼ばれる傾向にある、と説明しています。同じ白書は、2024年後半から「AIエージェント」をうたうサービスが多く出てきたことにも触れています。
AIの会社の説明も、ほぼ同じ方向です。
- Google Cloudの解説「AIエージェントとは」:AIを使って、ユーザーの代わりに目標を追い、タスクを完了させるソフトウェアのしくみ
- AWSの解説「AIエージェントとは」:目標は人間が決め、その目標のためにどう動くのがよいかは、AIエージェントが自分で選ぶ
- OpenAIの手引き『A practical guide to building agents』:あなたの代わりに、自分でタスクを成し遂げるしくみ
共通しているのは、「目標は人が決める」「手順と道具の使い方はAIが選ぶ」「実際に作業まで進める」の3点です。
生成AI・チャットボット・RPAとの違い(比較表)
AIエージェントと混同しやすい言葉を、表で比べます。RPAは、パソコンの決まった操作を記録して自動で繰り返すソフトのことです。RPA・ワークフロー自動化・AIエージェントのどれで業務を自動化するかの選び方は、AI自動化とは何かを解説した記事で比べています。
| 項目 | 生成AIのチャット | 従来のチャットボット | RPA | AIエージェント |
|---|---|---|---|---|
| 主にすること | 質問に答える、文章や画像を作る | 決められた質問に決められた答えを返す | 決められた操作をそのとおり繰り返す | 目標に向けて手順を考え、道具を使って作業を進める |
| 手順を決めるのは | 人(1回ごとに指示する) | 作った人(シナリオ) | 作った人(操作の記録) | AI(人が決めた範囲の中で) |
| 外のシステムを操作するか | 基本はしない(答えを返すだけ) | しないことが多い | する(決めた操作だけ) | する(検索・ファイル・アプリ・ブラウザなど) |
| 向いている仕事 | 下書き、要約、相談 | よくある質問への回答 | 手順が毎回同じ定型の入力 | 手順が少しずつ違う、いくつもの工程がある仕事 |
| 注意点 | 答えの誤り | 想定外の質問に弱い | 画面や手順が変わると止まる | 誤った操作が実際の結果になる。権限と確認の設計が要る |
IBMの解説「AIエージェントとは」は、チャットボットのような従来のAIアシスタントを「1つの要求に対して1つの情報を取得したり、簡単な作業を行う」受け身の働き方と説明しています。これに対してAIエージェントは、いくつもの手順が要る作業を自分で計画して進める、としています。
なお、AIエージェントは生成AIと別物ではありません。今のAIエージェントの多くは、生成AI(大規模言語モデル)を「頭脳」にして動いています。生成AIの使い方の1つの形、と考えると分かりやすいでしょう。
「ワークフロー」と「AIエージェント」の違い
AIエージェントを理解するうえで役に立つのが、生成AIの会社Anthropicの解説「Building effective agents」(2024年12月公開)にある区別です。
- ワークフロー:生成AIと道具を、あらかじめ人が決めた道筋(プログラム)どおりに動かすもの
- エージェント:生成AIが、自分で手順と道具の使い方を決め、進め方を握るもの
同じ解説は、AIエージェントの実体は多くの場合「環境からの結果を見ながら、道具を使うことを繰り返す生成AI」だと書いています。そして、できるだけ単純な方法から始め、必要なときだけ複雑にするよう勧めています。エージェント型のしくみは、多くの場合、速さや費用と引き換えに作業の出来を上げるものだからです。同じ解説は別の箇所で、エージェントは自律的に動くぶん、費用が高くなり、誤りが積み重なるおそれがあるとも書いています。
仕事に当てはめると、「手順が毎回同じならワークフロー、毎回少しずつ違うならエージェント」が目安になります。何でもAIエージェントにする必要はありません。
自律の度合いで見るAIエージェントの5つの段階
「どこからがAIエージェントか」で迷う方のために、自律の度合いを5つの段階に分けました。公的な決まりではなく、上の定義と各社の説明をもとにした筆者の整理です。
| 段階 | 呼び方 | AIがすること | 人がすること | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | チャット | 質問に答える、文章を作る | 毎回指示し、結果を使うか決める | 生成AIに要約を頼む |
| 1 | 決まった流れ(ワークフロー) | 決められた順番で処理する | 流れを作る | 届いた問い合わせを分類して担当に回す |
| 2 | 道具を使うAI | 必要に応じて検索やファイルを使う | 目標を伝え、結果を確かめる | 社内の資料を探して答えをまとめる |
| 3 | 任せて進めるAIエージェント | 手順を組み立て、アプリやブラウザを操作する | 範囲と権限を決め、重要な操作を承認する | 調べて表を作り、下書きのメールまで用意する |
| 4 | 複数のAIエージェント | 役割の違うエージェントが分担・連携する | 全体の目標と止め方を決める | 受付・調査・回答作成を別のエージェントが担う |
AI事業者ガイドラインの「ある程度の自律性も含む」という考え方に沿えば、段階2〜4がAIエージェントに当たります。今「AIエージェント」と呼ばれているサービスの多くは、段階2と3に当たると考えられます。
AIエージェントの仕組み:頭脳・道具・記憶・計画で動く
次に、AIエージェントがどのように動いているのかを見ます。細かな作りは製品ごとに違いますが、基本の部品はほぼ共通です。
AIエージェントを作る4つの部品
Google Cloud・AWS・OpenAIの説明をまとめると、AIエージェントは次の4つの部品でできています。
頭脳:大規模言語モデル(LLM)
大規模言語モデル(LLM)とは、大量の文章から学んだ、言葉を理解して文章を作るAIのことです。ChatGPTやClaude、Geminiの中で動いているのがこれです。Google Cloudの解説は、LLMをAIエージェントの土台とし、理解・推論・行動の力を与えるものと説明しています。
道具:検索・アプリ・ファイルとつなぐ部分
同じ解説は、道具(ツール)を「エージェントが環境とやり取りして機能を強化するために利用できる関数または外部リソース」としています。ウェブ検索、社内の文書、表計算、メール、カレンダー、業務システムなどが道具に当たります。道具を持たない生成AIは答えを返すことしかできませんが、道具があると実際の作業ができるようになります。業務システムとAIをつなぐ3つの方法は、AIシステム開発の進め方と注意点で整理しています。
記憶:やり取りや作業の途中経過を覚える部分
AWSの解説によると、記憶の部品(メモリモジュール)があることで、エージェントはやり取りや作業をまたいで情報を持ち続けられます。前の手順で分かったことを、次の手順で使うための部分です。
計画と振り返り:目標を小さな手順に分ける部分
同じAWSの解説は、計画の部品が、目標を小さく扱いやすい手順に分け、順番に並べると説明しています。また、結果を見てやり方を良くしていく「学習と振り返り」を、計画とは別の部品として挙げています。
OpenAIの手引きは、同じことを「モデル・ツール・指示」の3つで説明しています。ここでの「指示」には、エージェントのふるまいを決める指針と、ガードレール(安全柵)が含まれます。何をしてはいけないかを決めておくことも、部品の1つだということです。
AIエージェントで1つの仕事が進む流れ(例)
たとえば「来月の展示会に出る会社を調べて、連絡先の一覧を作り、あいさつのメールの下書きを用意して」と頼んだとします。AIエージェントの中では、一般的に次のような流れで作業が進みます(説明のための例です)。
- 目標を読み取り、「出展企業を調べる」「一覧にまとめる」「メールの下書きを作る」という手順に分ける
- ウェブ検索の道具で展示会の公式ページを探し、出展企業の名前を集める
- 各社の公式サイトを開き、問い合わせ先を表にまとめる
- 表の抜けや重なりを見直し、足りない所を調べ直す
- 会社ごとのメールの下書きを作り、送る前に人の確認を求めて止まる
2〜4の手順を、AIが結果を見ながら自分で繰り返すのが、チャットとの大きな違いです。5のように「外に出る操作の前で止まる」設計にしておくことが大切です。主なサービスにも、重要な操作の前に確認を求める仕組みがあります。
AIエージェントの種類:教科書の分け方と今の分け方
AIエージェントの種類には、いくつかの分け方があります。
教科書にある「5つの種類」
IBMの解説は、単純なものから高度なものへ、次の5つを挙げています。
- 単純条件反射エージェント:今見えていることだけで、決めたルールどおりに動く
- モデルベース条件反射エージェント:周りの状況を内部に持ち、それも使って動く
- 目的ベース・エージェント:目標に近づく行動を選ぶ
- 効用ベース・エージェント:いくつかの選択肢から、いちばん望ましいものを選ぶ
- 学習エージェント:経験から学んで、動き方を良くしていく
これはAIの研究で古くから使われてきた分け方とされます。ChatGPTのエージェント機能のように、生成AIを頭脳にした今のAIエージェントを選ぶときには、次の「使う場所」での分け方のほうが役に立ちます。
今のサービスの分け方:使う場所で4つ
今のAIエージェントのサービスは、どこで動くかで次の4つに分けると整理しやすくなります(筆者の整理)。
- チャットの中で任せるもの:生成AIのアプリの中で、調べもの・資料作りなどを任せる
- ブラウザやパソコンを操作するもの:画面を見て、クリックや入力をする
- 会社の業務システムの中で動くもの:メール、顧客管理、社内の文書などとつながる
- 自分で組み立てるもの:部品を組み合わせて、自社の業務に合わせて作る
それぞれの代表的なサービスは、後の「サービス比較」の章で紹介します。
マルチエージェント:複数のAIエージェントで分担する
Google Cloudの解説は、複数のAIエージェントが共通の目標や個々の目標のために協力したり競ったりする形を「マルチエージェント」と呼んでいます。AI事業者ガイドラインの注でも、複数のAIエージェントで自律的に判断し行動する目標主導型のAIシステムを「エージェンティックAI」と呼び、AIエージェントより広い考え方として紹介しています。
OpenAIの手引きは、中心のエージェントが専門のエージェントを呼び出す「マネージャー型」と、対等なエージェントが仕事を引き継ぎ合う「分散型」を挙げています。そのうえで、まずは1つのエージェントの力を引き出すことを勧めています。最初から複数を組み合わせる必要はありません。
外部とつなぐ標準:MCPとA2A
AIエージェントが道具やほかのエージェントとつながるための、共通の決まり(標準)も整ってきました。
- MCP(Model Context Protocol):AIと、データのある場所(業務ツールや開発環境など)をつなぐ標準です。Anthropicが2024年11月に公開しました。MCPの公式サイトは、MCPを「AIアプリのUSB-C端子」にたとえています
- A2A(Agent2Agent):AIエージェント同士が話し合うための標準です。Googleが2025年4月に発表し、発表時点で50社以上の企業が支援していました
Anthropicは2025年12月、MCPをLinux Foundationのもとにできた団体(Agentic AI Foundation)に寄贈しました。その発表では、MCPはChatGPT、Gemini、Microsoft Copilotなどに採用されているとしています。A2Aも、2025年6月にLinux Foundationのプロジェクトになりました。
MCPは「AIと道具をつなぐ」、A2Aは「エージェント同士をつなぐ」もので、A2Aの公式サイトも両者は競合ではなく補い合う関係だと説明しています。MCPの仕組みと使い方は、MCPとは?生成AIと社内のツールをつなぐ仕組みで詳しく解説しています。
AIエージェントでできること・活用事例
ここからは、AIエージェントで実際に何ができるのかを、仕事の種類と国内の公表事例で見ていきます。
仕事の種類別:AIエージェントでできること
公表されている事例をもとに、AIエージェントが使われている仕事を種類ごとにまとめました(下の事例の見出しと対応しています)。
| 仕事の種類 | AIエージェントにさせること | 人が残すこと | 下の事例 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせ対応 | よくある問い合わせの一次対応、回答の案づくり | 難しい相談、最後の判断 | 四日市市、富士通 |
| 窓口・申請の審査 | 申請の入力案内、内容のチェック、判定の補助 | 認める・認めないの最終判断 | 大阪市、葛飾区 |
| 営業 | メールや会議の記録から商談情報を更新する | 顧客との関係づくり、提案 | FUJI |
| 経理 | 経費精算の確認・承認・差し戻しの判断 | 抜き取りでの点検、ルールの見直し | 味の素フィナンシャル・ソリューションズ |
| 購買・調達 | 取引先との納期・数量の調整 | 交渉方針と例外の判断 | NEC |
| システム開発 | プログラムを書く、直す、テストする | 何を作るかの決定、確認 | サイバーエージェント |
| 社内の調べもの | 社内文書の検索・要約、調査、議事録づくり | 結論を使うかの判断 | SOMPOホールディングス |
国内のAIエージェント活用事例
成果の数字には、実際の結果(実績)なのか、試算や見込みなのか、実証実験の結果なのかを添えました。同じ数字が自社で出るとは限らないため、読むときはこの区別に注意してください。
大阪市:通勤届の審査を支えるAIエージェントを実証(試算で最大約40%短縮)
大阪市の発表(2026年3月)によると、大阪市は、職員の通勤届(年間約10,000件)の処理業務に、日立製作所が試行的に開発したAIエージェントを実証環境で当てはめました。
- させたこと:申請者への入力の案内、審査者の内容チェック・認定可否の判定・払戻計算の補助の4つ
- 成果:すべて人手で行う場合と比べ、試算で業務時間が最大約40パーセント短縮する可能性(試算)
葛飾区:窓口の会話から必要な手続きを職員に示すAIエージェント
NTTアドバンステクノロジの発表(2025年4月)によると、同社は葛飾区などと協力し、窓口を支えるAIエージェントの試験運用を2025年秋から始めるとしています。窓口での相談者と職員の会話から、必要な手続きなどの情報を作り、職員に示すしくみです。答えるのは職員で、AIエージェントは職員を支える役です。成果の数字は公表されていません。
四日市市:市民からの問い合わせの一次対応
カラクリ株式会社の発表(2025年11月)によると、四日市市は、顧客対応のAIエージェントを導入しました。市への問い合わせは月間約12万件、総通話時間5,200時間にのぼり、その対応の負担を減らすのが目的です。AIエージェントが定型的な問い合わせの一次対応を担います。削減した時間などの数字は公表されていません。
富士通:Salesforceのサポートデスクで、8回のやり取りが1回に(検証)
セールスフォース・ジャパンの発表(2025年1月)によると、富士通は、顧客向けの「富士通Salesforceサポートデスク」に、SalesforceのAIエージェント「Agentforce」を採用しました。
- 検証の結果:それまでのボットでは8回のやり取りが必要だった問い合わせが、1回で解決した(検証)
- 目標:月間の問い合わせの約15%を、AIエージェントが対応できる体制をつくる(目標)
FUJI:9か月で8つのAIエージェントを社内で作り、営業の商談情報を自動で更新
Salesforceの導入事例によると、製造業のFUJIは、9ヵ月で「FAQ Agent」「商談更新Agent」など8体のAIエージェントを作り、2026年3月から順に本番で使い始めました。
- させたこと:顧客や海外代理店とのメール、会議の録画を取り込み、顧客管理システムの商談情報を自動で更新して、担当の営業に知らせる
- 成果:試験導入(PoC)の試算で、年間2,000時間の工数削減の見込み(見込み)
味の素フィナンシャル・ソリューションズ:経費精算の承認をAIエージェントが判断
ファーストアカウンティングの発表(2026年4月)によると、味の素グループの経理を担う味の素フィナンシャル・ソリューションズで、経理のAIエージェントが本番稼働を始めました。
- させたこと:経費精算について、AIがログインから申請内容の確認・承認・差し戻しの判断までを行う
- 人の役割:人は事後の抜き取り確認(サンプルチェック)など、内部統制の担保に力を注ぐ
- 成果:これまで1件4〜5分かかっていた判断を自動化。月10,000件規模の現場なら年間約1万時間の削減が期待できる(見込み)
NEC:取引先との納期・数量の調整をAIエージェントが交渉(実証で95%が自動合意)
NECの発表(2025年12月)によると、NECは2024年11月、グループ会社で約1,300品目の部品について、取引先との納期・数量の調整をAIエージェントに任せる実証を行いました。
- 成果:購買側の担当者が入らずにAIだけで合意できた割合(自動合意達成率)が95%(実証)
- 成果:数時間から数日かかっていた交渉の開始から完了までを、約80秒に短縮できることを確認(実証)
サイバーエージェント:開発のAIエージェントで、一部の組織の開発量が約2倍に
サイバーエージェントの発表(2026年7月)によると、同社はエンジニア約1,200名を対象に、開発のAIエージェントの費用を1人あたり月額200米ドル支援する制度を2025年6月に始めました。
- 使ったもの:Claude Code、Codexなど、プログラムを書くAIエージェント
- 成果:1年で、一部の開発組織で開発量が約2倍に増えたケースや、ゲーム部門で試作品(モック)の制作量が約3倍速になった事例(実績。全社の平均ではない)
SOMPOホールディングス:国内グループ社員約30,000人を対象にAIエージェントを実証
SOMPOホールディングスの発表(2025年12月)によると、同社は国内グループ会社の社員約30,000人を対象に、AIエージェントのツールを2026年1月から実証実験として導入し、活用の効果を検証すると発表しました。社内文書の検索・要約、調べもの、議事録づくりの支援、データ分析の補助などの汎用的な使い方に加え、保険の業務に合わせた使い方を想定しています。成果の数字は、発表の時点では示されていません。
生成AI全体の活用事例は生成AIの活用事例33選に、会社が自社でAIを作った事例はAI開発事例100選にまとめています。
AIエージェントの活用事例から分かる共通点
9つの事例を並べると、次の共通点が見えてきます。
- 1つの業務に絞っている:通勤届、経費精算、納期の調整など、対象をはっきり決めている
- 人の確認を残している:葛飾区は職員を支える形、味の素フィナンシャル・ソリューションズは人が事後に抜き取りで確かめる形にしている
- 数字の多くは試算・見込み・実証:本番で出た実績の数字は、まだ多くない
- 自治体も使い始めている:窓口、申請の審査、問い合わせ対応で、実証や導入が進んでいる
自社に当てはめて考えるときは、成果の数字よりも「何を任せ、どこで人が確かめているか」を見るのがおすすめです。たとえば経理の事例は、判断そのものをAIエージェントに任せる代わりに、人が事後に抜き取りで確かめる形にしています。窓口の事例は、答えるのは職員で、AIエージェントは必要な手続きを示す役にとどめています。同じ業務でも、任せる深さは会社ごとに選べるということです。
データで見るAIエージェントの広がり
AIエージェントそのものの利用率を示す公的な数字は、2026年9月時点で見つけられませんでした。総務省の令和8年版 情報通信白書(概要)にあるのは、生成AIの数字です。白書の企業調査は、従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取り組みを始めた企業の管理職以上が対象です(日本は515件)。自社の何らかの業務で生成AIを使っていると答えた割合は、日本では86.4%でした(生成AIの活用方針を「わからない」と答えた人を除いて計算)。
働く人の関心については、野村総合研究所のAI利用に関する国際比較調査(2025年)があります。国内の就業者に「今後(も)活用したいAI」を聞いたところ、「AIエージェント」は10.6%、「複数のAIエージェントを活用したマルチエージェントシステム」は7.3%でした。
将来の見通しとしては、調査会社Gartnerの予測(2025年6月)があります。2028年までに、日々の仕事の判断の少なくとも15%がエージェント型AIによって自律的に行われ(2024年は0%)、企業向けソフトウェアの33%にエージェント型AIが組み込まれる(2024年は1%未満)としています。ただし、これはあくまで予測です。
主なAIエージェントのサービス比較(2026年9月時点)
AIエージェントのサービスは、名前や内容がよく変わります。ここでは2026年9月時点で各社の公式ページ・ヘルプを確かめた内容を、使う場所ごとにまとめます。料金は地域やプランで変わるため載せていません。使う前に公式ページで確かめてください。
使う場所で4つに分けたAIエージェントの比較表
| 使う場所 | 代表的なサービス(2026年9月時点) | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| チャットの中で任せる | ChatGPT Work(OpenAI)、Claude(Anthropic)、Gemini Spark(Google) | まず個人で試したい人 | 使える機能はプランで違う。重い作業ほど利用枠を多く使う |
| ブラウザやパソコンを操作する | ChatGPTのBrowser・Computer Use、Claude in Chrome | ウェブでの手作業が多い人 | ページの中の隠れた指示に注意 |
| 会社の業務システムの中で動く | Microsoft 365 Copilot、Copilot Studio、Agentforce、Gemini Enterprise | 社内の文書や顧客情報とつなぎたい会社 | 見せてよい情報の整理が先 |
| 自分で組み立てる | Dify、n8n、Claude Code、Codex | 自社の業務に合わせて作りたい人・開発者 | 作ったあとの保守と、ライセンスの条件 |
個人ですぐ試せるAIエージェント
ChatGPT Work(OpenAI)
OpenAIは2026年7月、ChatGPT Workを発表しました。アプリやファイルをまたいで作業し、必要なら何時間もプロジェクトに取り組んで、目標を完成した成果物にするエージェントです。同じ発表によると、チャット、Work、CodexはFreeを含むすべてのプランで使えます。作業の途中で進み具合を見たり、方向を変えたり、重要な操作を承認したりできます。
ウェブサイトを開いて操作するBrowser、パソコンの画面を見て操作するComputer Useという機能もあります。ただし、Computer Useは「対応地域で」使えるとされており、日本が対応地域かを明記した公式の文は確認できませんでした。
なお、OpenAIが2025年7月に発表した「ChatGPT エージェント」の発表ページには、今は古い内容であり、ChatGPT Workなどを見るよう案内が出ています(2026年9月時点)。古い記事で見かける名前と、今の名前が違うことがあります。
Claude(Anthropic)
Anthropicのヘルプによると、事務などプログラミング以外の仕事を任せるClaude Coworkは、チャットと1つの「Claude」にまとめられつつあります(2026年9月時点)。有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)が対象です。
ブラウザを操作する拡張機能Claude in Chromeは、すべての有料プランで使えます。パソコンの操作(コンピュータ使用)は、ProとMaxのベータ版です。
Gemini Spark(Google)
Googleのヘルプによると、Gemini Sparkは、Geminiアプリの中で複雑な作業の流れを自動化し、続いている作業の予定も管理できる個人向けのAIエージェントです。Google AI ProかGoogle AI Ultraに登録した個人のアカウントが対象で、仕事用や学校用のアカウントでは使えません。
同じヘルプは、使えない地域として欧州経済領域、ナイジェリア、スイス、英国を挙げており、日本はこの中に入っていません(2026年9月時点)。以前の「Agent Mode」などの名前との関係を明記した公式の文は、確認できませんでした。
会社の業務システムで使うAIエージェント
Microsoft 365 Copilotのエージェントと Copilot Studio
Microsoftの説明によると、Microsoft 365 Copilotのエージェントは、情報を取ってきたり要約したりするだけでなく、メールの送信や記録の更新などの操作もできます。
エージェントを作る道具のCopilot Studioは、画面の操作を中心に(ローコードで)エージェントを作れるもので、作ったエージェントはTeamsやウェブサイトなどで動かせます。対応言語の一覧には日本語が入っています。
Salesforce Agentforce
Salesforceは、AIエージェントの製品群「Agentforce」を、2024年10月30日から日本で提供を始めると発表しました。2026年8月には、社内のデータをまたいで日本語の質問に答え、作業も進めるAgentforce Coworkerの日本での提供を始めました。顧客管理(CRM)とつなげて使う会社向けの製品です。
Gemini Enterprise(Google)
Googleは2025年10月、会社向けのGemini Enterpriseを発表しました。プログラムを書かずに(ノーコードで)エージェントを連携させ、部署の仕事を自動化できるとしています。製品ページによると、自社で作ったエージェントやほかの会社のエージェントを加えられるのは、StandardとPlusのエディションです。
自分で組み立てるAIエージェント
自社の業務に合わせて作りたい場合は、組み立て用の道具を使います。
- Dify:エージェントやワークフロー、チャットボットを作れるオープンソースの基盤。自社のサーバーで動かせる版もあります。ライセンスはApache 2.0に追加の条件を付けた独自のものなので、商用で使う前に条件を読んでください
- n8n:いろいろなアプリをつなぐ自動化の道具で、OpenAI・Anthropic・Googleの生成AIを組み込んだAIのワークフローを作れます。自社のサーバーでも動かせますが、ライセンスは一般的なオープンソースではなく「fair-code」と呼ばれる独自の条件です
- 開発者向け:プログラムを読み書きしてコマンドを実行するClaude Codeや、手元のパソコンで動くCodex CLIがあります。上のサイバーエージェントの事例で使われているのもこの種類です
AIエージェントのサービスを選ぶときに見る5つの観点
名前や宣伝の言葉だけでは、サービスの違いは分かりません。比べるときは、次の5つの観点で公式ページやヘルプを読むと、自分に合うかを判断しやすくなります(筆者の整理)。
| 観点 | 確かめること | なぜ大切か |
|---|---|---|
| 何を操作できるか | 検索だけか、ファイル・メール・ブラウザ・社内システムまで触れるか | できることが多いほど便利だが、誤ったときの影響も大きい |
| 人の承認の仕組み | 送信・購入・削除の前に止まるか。承認の細かさを設定できるか | 誤った操作を外に出さないための最後の歯止めになる |
| データの扱い | 入れたデータが学習に使われるか。保存の場所と期間 | 個人情報や取引先の情報を扱えるかが決まる |
| 記録と管理 | 何をしたかの記録が残るか。管理者が利用者や権限を管理できるか | 問題が起きたときに原因を追えるか、止められるかが決まる |
| 費用の仕組み | 月額の定額か、使った量に応じてかかるか。上限を決められるか | エージェントは作業が長いほど費用がかさみやすい |
個人で試す段階では「承認の仕組み」と「データの扱い」、会社で使う段階では「記録と管理」と「費用の仕組み」が特に大切になります。
AIエージェントのメリット・デメリットとリスク、よくある誤解
AIエージェントは便利な一方で、「行動する」ぶん、生成AIのチャットより気をつけることが増えます。良い面と注意点を分けて整理します。
AIエージェントのメリット
- いくつもの手順がある作業をまとめて任せられる:AI事業者ガイドラインの別添も、AIエージェントが意図をくんで自律的に作業を進めることで、複雑な業務の流れを効率化し、人の負担を大きく減らせるとしています
- 手順が毎回少し違う仕事にも対応しやすい:決まった操作しかできないRPAと違い、状況に合わせて手順を変えられます
- 人は判断や対人の仕事に時間を回せる:事例の富士通や四日市市のように、定型的な問い合わせをAIエージェントが受け、人は難しい相談に集中する形がとれます
- 時間を選ばずに動ける:夜間や休日でも作業を進められます。ただし、止め方と確認の仕方を決めておくことが前提です
AIエージェントのデメリットとリスク
間違いが積み重なり、実際の結果になる
生成AIは、事実と違うことをもっともらしく答えることがあります。チャットなら人が読んで気づけますが、AIエージェントは誤った前提のまま次の手順に進むことがあります。Anthropicの解説も、エージェントは自律的に動くぶん、費用が高くなり、誤りが積み重なるおそれがあると書いています。
プロンプトインジェクション:ページやメールに隠れた指示にだまされる
プロンプトインジェクションとは、AIへの指示に悪い指示を紛れ込ませ、AIに意図しない動きをさせる攻撃のことです。ソフトウェアのセキュリティに取り組む団体OWASPの「LLMアプリケーションのトップ10(2025年版)」日本語版でも、大きなリスクの1つに挙げられています。
Anthropicのヘルプは、ブラウザを使うAIが直面する最大のリスクはプロンプトインジェクションだとし、ウェブサイトやメール、文書に隠された悪い指示が、AIを意図しない行動に誘導するおそれがあると説明しています。GoogleのGemini Sparkのヘルプも、人には見えないがAIエージェントには読める悪い指示が、ウェブサイトやメール、文書などに埋め込まれていると起こる、と注意しています。
権限の与えすぎ:意図しない注文や削除
AI事業者ガイドライン別添は、AIエージェントが自律的に動く中で、人の意図しない商品の注文やファイルの削除などを行う可能性があると書いています。
OWASPの英語版の解説は、この種の問題(過剰なエージェンシー)の原因を、機能の与えすぎ、権限の与えすぎ、自律の与えすぎの3つにまとめています。
IPAのサイトには、研修の受講生がまとめた「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」が載っています(IPAの公式見解ではありません)。この手引書は、AIエージェントにメールを扱わせた結果、意図せず多くのメールが削除された事案を挙げています。原因は、削除まで含む過剰な権限を与えていたことと、実行前の人の承認を仕組みとして組み込まず、指示の文だけに頼っていたことだとしています。
費用がかさみ、効果が見えないまま止まる
Gartnerの予測(2025年6月)は、エージェント型AIのプロジェクトの40%超が、2027年末までに中止されるとしています。理由として挙げているのは、膨らむ費用、はっきりしない事業上の価値、不十分なリスク管理です。
個人向けのサービスでも、たとえばChatGPT Workは、複雑な作業ほどプランの利用枠を多く使う場合があると説明しています。使った量と得られた効果を、はじめに測れるようにしておくことが大切です。
情報の扱いとセキュリティ
Gartnerの日本法人は2026年3月の発表で、2028年までの間、企業にとって最も深刻な情報漏えいの原因は、AIエージェントを経由したものになるという仮説を示しました。そのうえで、エージェントが社内で増える前に、AIエージェントの識別・認証・権限管理の仕組みを作ることが重要だとしています。
IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織編で「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が3位に初めて選ばれました。個人情報の扱いについては、個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月)が、個人情報を含む指示を入れる場合は利用目的の範囲内かを十分に確認することを求めています。個別の判断が要る場合は、社内の担当者や専門家に確かめてください。
AIエージェントについてのよくある誤解
誤解1:AIエージェントに頼めば、何でも最後まで自動でやってくれる
今のAIエージェントは、決められた範囲の中で手順を選んで進めるものです。主なサービスは、送信や購入などの重要な操作の前に人の確認を求めたり、人が承認できたりする作りになっています。Gartnerの予測のように、効果が出ずに止まるプロジェクトも多いと見られています。「任せる範囲」を決めて使うものだと考えてください。
誤解2:「AIエージェント」と名の付く製品は、どれも同じようなもの
Gartnerの同じ発表は、AIアシスタントやRPA、チャットボットなどの既存の製品を、中身が大きく変わらないまま「エージェント」と呼び直す動きを「エージェント・ウォッシング」と呼んでいます。数千あるとされるエージェント型AIの提供会社のうち、本物は約130社にすぎない、という見立ても示しています。名前ではなく、何を自分で判断し、どの道具を使えるのかを見て選びましょう。
誤解3:AIエージェントを入れれば、人は確認しなくてよくなる
OWASPの日本語版の対策は、影響の大きい操作を実行する前に、人が承認することを求めています。AI事業者ガイドラインも注で、人がAIの判断を承認するときは、承認する理由や根拠を自分で考えてから承認すべきだという提案を紹介しています。「AIが言うから」とそのまま承認するのでは、確認したことになりません。
国のガイドラインがAIエージェントに求めていること
AIエージェントについての国のルールは、まだ作られている途中です。2026年9月時点の主な資料は次のとおりです。
- AI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月):AIエージェントの定義を置いています。別添では、自律性が高まると人の監視だけでは追いつかない場面も想定されると書いています。AI提供者向けの対策には、AIシステム全般について、与える権限を業務に必要な最小限にすることも挙げています
- デジタル庁の生成AIの調達・利活用のガイドライン(2026年6月改定):ガイドラインは、AIエージェントなどもAIガバナンスの枠組みの対象としています。人が出力の適切さを判断しないままタスクを実行するものは、作ることを制限するなどのルールを整えるよう求めています
- AIセーフティ・インスティテュートの報告書(2025年10月):報告書は、企業への聞き取りのまとめとして、AIエージェントが広がるにつれてデータへのアクセス権限の管理がより重要になると書いています
- 経済産業省の検討会:経済産業省は、事業者がAIエージェントを安全に使うためのサブワーキンググループを設け、2026年9月18日に第1回を開きました
これらの資料と、上で紹介した各社のヘルプからは、「権限は必要な分だけ」「重要な操作は人が確かめる」という考え方が読み取れます(筆者の整理)。
AIエージェントの始め方と、任せてよい仕事の見分け方
最後に、AIエージェントを実際に使い始めるときの考え方と手順をまとめます。
任せてよい仕事の判断表:3つの問いで線を引く
AIエージェントに何を任せるかは、次の3つの問いで考えると線を引きやすくなります(筆者の整理)。
- 問い1:その操作は、あとから取り消せるか
- 問い2:その操作は、社外や他人に届くか(送信・公開・支払い・契約・削除)
- 問い3:間違っていたとき、人がすぐに気づけるか
| 仕事の例 | 取り消せるか | 外に届くか | 気づけるか | 任せ方の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 調べものをして要約する | できる | 届かない | 気づける(元の資料を見る) | 任せやすい |
| 資料やメールの下書きを作る | できる | 届かない(送るのは人) | 気づける | 任せやすい |
| 社内の表やファイルを更新する | 履歴があればできる | 社内だけ | 変更の知らせがあれば気づける | 変更の記録を残して任せる |
| メールの送信・会議の予約・問い合わせへの返信 | できないことが多い | 届く | 届いたあとに気づく | 操作の前に人が承認する |
| 支払い・購入・契約・データの削除 | できない | 届く・消える | 気づいたときには遅い | 任せない、または必ず人が実行する |
| 個人情報や機密情報を扱う作業 | できない(漏れたら戻らない) | 届くおそれ | 気づきにくい | 社内のルールを決めてから |
この考え方は、OWASPの日本語版の対策(影響の大きい操作の前に人の承認を求める)や、主なサービスの「重要な操作の前に確認する」作りとも合っています。
AIエージェントを始める手順
- 困っている作業を1つ選ぶ:毎週くり返していて、手順が少しずつ違う作業が向いています。いきなり全社の業務を対象にしないこと
- 判断表で線を引く:その作業の中で、任せる所・承認をはさむ所・任せない所を決めます
- 権限の小さい環境で試す:本番のメールや顧客のデータではなく、試験用のアカウントや写しのデータで始めます。AI事業者ガイドラインの別添も、AIシステム全般の対策として、権限を業務に必要な最小限にすることを挙げています
- 人が確認する位置を決める:たとえばClaude in Chromeの権限ガイドには、操作のたびに承認を求めるモードがあります。最初はこうした設定を使うと安心です
- 数字で測って、続けるかを決める:かかった時間、直した回数、使った利用枠を記録し、続ける・広げる・やめるを判断します
AnthropicやOpenAIの手引きも、単純な形や1つのエージェントから始めることを勧めています。小さく試して、うまくいった所から広げるのが近道です。
会社でAIエージェントを使うときに決めておく社内のルール
社員がそれぞれ自由にエージェントを作り始めると、「誰が何のために作ったか分からないエージェント」が増えていきます。Gartnerの日本法人も2026年3月の発表で、こうしたエージェントが乱立すると早い段階で制御できなくなるおそれがあると指摘しています。会社で使うなら、少なくとも次のことを決めておきましょう。
- 使ってよいサービスの一覧:データの扱いを確かめたサービスだけを認める
- エージェントの持ち主:エージェントごとに、作った人と責任を持つ部署を決める
- 渡してよい情報の範囲:顧客情報・人事情報・取引先との契約などを入れてよいかを決める
- 承認が要る操作:社外への送信・支払い・削除・公開は、人の承認なしに実行させない
- 記録と見直し:作業の記録を残し、定期的に「今も必要か」「権限は多すぎないか」を見直す
承認のルールは、エージェントへの指示の文に書くだけでは足りません。上で紹介したIPAのサイトの手引書が挙げた事案のように、指示の文は守られないことがあります。サービスの設定や権限そのもので、承認なしには実行できない形にしておくことが大切です。
AIエージェントを始める前のチェックリスト
- 任せる作業の目的と、終わりの状態(何ができたら完了か)を言葉にした
- 判断表で、任せる所・承認をはさむ所・任せない所を決めた
- エージェントに渡す権限(見られるデータ、使えるアプリ、できる操作)を必要な分だけにした
- 送信・購入・削除・公開の前に、人が承認する設定にした
- 個人情報や機密情報を入れてよいかを、社内のルールで確かめた
- サービスの利用規約とデータの扱い(学習に使われるか)を確かめた
- 作業の記録(何をしたか)を残せるようにした
- 止めたいときの止め方を、担当者が知っている
- 効果を測る数字(時間・直した回数・費用)を決めた
AIエージェントについてよくある質問
AIエージェントは無料で使えますか?
使えるものもあります。たとえばChatGPT Workは、発表によるとFreeを含むすべてのプランで使えます(2026年7月の発表)。ただし、使える量はプランによって違い、複雑な作業ほどプランの利用枠を多く使う場合があります。ClaudeのCoworkやGemini Sparkは有料プランが対象です(2026年9月時点)。
生成AIとAIエージェントは、どちらを使えばよいですか?
1回の質問で済む作業(要約・下書き・相談)は、生成AIのチャットで十分です。調べる・まとめる・ファイルを作るなど、いくつもの手順がある作業を続けて任せたいときに、AIエージェントが向いています。今のAIエージェントの多くは生成AIを頭脳にしているので、同じサービスの中で使い分けることもできます。
AIエージェントとRPAはどう違いますか?
RPAは、記録した操作をそのとおりに繰り返す道具で、画面や手順が変わると止まりやすい特徴があります。AIエージェントは、目標に合わせて手順を自分で選ぶので、手順が少しずつ違う仕事にも対応できます。一方で、動きが毎回同じとは限らないため、手順が完全に決まっている作業ならRPAやワークフローのほうが確実な場合もあります。
プログラミングができなくてもAIエージェントを作れますか?
作れます。MicrosoftのCopilot Studioはローコード、GoogleのGemini Enterpriseはノーコードでエージェントを作れるとしています。Difyやn8nのような、組み立て用の道具もあります。ただし、どのデータを見せ、どこで人が確かめるかの設計は、道具に関係なく人が決める必要があります。
AIエージェントは日本語で使えますか?
主なサービスの多くは日本語で指示できます。たとえばCopilot Studioの対応言語には日本語が入っており、SalesforceのAgentforce Coworkerは日本語を含む言葉での質問に答えるとしています。ただし、機能によっては提供地域が限られるものがあります(ChatGPTのComputer Useは「対応地域で」提供)。使いたい機能ごとに、公式のヘルプで確かめてください。
AIエージェントに個人情報を入れても大丈夫ですか?
入れる前に確かめることがあります。個人情報保護委員会の注意喚起は、個人情報を含む指示を入れる場合、利用目的の範囲内かを十分に確かめること、個人データを入れる場合は提供会社がそのデータを機械学習に使わないことなどを確かめることを求めています。会社で使うなら、社内のルールを先に決めてください。個別の事情で判断が変わるため、迷うときは専門家に相談してください。
AIエージェントに仕事を奪われますか?
仕事の中身は変わっていくと考えられます。Gartnerの予測では、2028年までに日々の仕事の判断の少なくとも15%が、エージェント型AIで自律的に行われるとされています。一方で、この記事の事例の多くは、最後の判断や事後の確認、顧客との関係づくりを人が担う形にしています。定型的な作業をAIエージェントに任せ、人は判断と確認に回る、という役割の分け方が現実的です。
MCPとAIエージェントは何が違いますか?
AIエージェントは、目標に向けて手順を考えて作業を進める「AIの使い方」です。MCPは、そのAIが外部の道具やデータを使うときの「つなぎ方の決まり」です。役割が違うので、どちらか一方を選ぶものではありません。MCPに対応した道具が増えるほど、AIエージェントが使える道具も増えていきます。詳しくはMCPとは?をご覧ください。
まとめ:AIエージェントは「任せる範囲」を決めてから使う
この記事の要点
- AIエージェントとは、人が目標を伝えると、AIが手順を組み立て、道具を使って作業を進めるしくみ。国のガイドラインは「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定めている
- 生成AIのチャットとの違いは、行動まで任せられること。頭脳は生成AI(大規模言語モデル)で、道具・記憶・計画の部品を組み合わせて動く
- 国内では、問い合わせ対応、申請の審査、営業、経理、調達、開発、社内の調べもので使われ始めている。ただし公表された数字の多くは試算・見込み・実証
- リスクは、間違いの積み重ね、プロンプトインジェクション、権限の与えすぎ、費用、情報漏えい。対策の基本は「権限は必要な分だけ」「重要な操作は人が承認」
- 始めるときは、1つの作業を選び、「取り消せるか・外に届くか・気づけるか」で任せる範囲を決めてから、小さく試す
読者のタイプ別:次にすること
- まず個人で試したい方:使っている生成AIのサービスにエージェント機能があるかを確かめ、調べものと下書きのように「外に届かない作業」から試してください
- 会社で使うかを検討している方:チェックリストを使い、対象の業務を1つ決めて、権限と承認の位置を書き出してください。情報システムやセキュリティの担当者と早めに話すことをおすすめします
- 自社の業務に合わせて作りたい方:まずは1つのエージェントと少ない道具で作り、作業の記録と止め方を用意してから広げてください
さらに理解を深めるために確かめたいこと
- 使いたいサービスの、今のプランごとの機能と提供地域(名前と中身がよく変わります)
- そのサービスが、入れたデータを学習に使うかどうかと、その設定の方法
- AI事業者ガイドラインや経済産業省の検討会の、これからの改定の内容
- 自社の業務の中で、「手順は毎回違うが、間違えても取り返せる作業」がどこにあるか



