AIで業務効率化する方法とは?向いている業務の見分け方と、小さく始める進め方

AIで業務効率化する方法|向いている業務の見分け方と、小さく始める進め方
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「AIで業務効率化」という言葉をよく見かけるけれど、自社の仕事でも本当に効果があるのか、何から始めればよいのか分からない、という方は多いのではないでしょうか。

結論から言うと、AIによる業務効率化とは、議事録の作成やメールの返信、資料づくりのような時間のかかる定型業務をAIに任せ、空いた時間を人にしかできない仕事に充てることです。総務省の調査では、デジタル化にすでに取り組んでいる企業の9割近くが何らかの業務で生成AIを使っており、なかでも議事録・メール作成でもっとも効果を実感しているという結果が出ています。一方、全国の中小企業を広く対象にした調査では、AIを導入している会社は2割ほどです。これから始める会社も多く、何から手をつけるかが分かれ目になります。

この記事では、AIによる業務効率化が注目される背景から、効率化しやすい業務・しにくい業務の見分け方、実際の企業の取り組み、小さく始める進め方、注意しておきたい点までを整理します。もとにしたのは、2026年9月時点で公表されている資料と、筆者が担当した相談の実例です。読み終えるころには、自社のどの業務から手をつければよいか、判断の材料が持てる状態を目指します。

目次

AIによる業務効率化とは?今、必要とされている理由

まず、「AIによる業務効率化」がどういうことを指すのか、そしてなぜ今これほど話題になっているのかを整理します。

業務効率化とは何をすることか

業務効率化とは、同じ成果をより少ない時間・人手で出せるようにすることです。AIによる業務効率化は、そのための道具としてAI(人工知能)を使うことを指します。具体的には、これまで人が手作業で行っていた次のような仕事の一部を、AIに任せる、あるいはAIに手伝ってもらう形で進めます。

  • 文章を作る(メールの下書き、報告書、議事録の要約など)
  • 情報を探す・まとめる(調べもの、資料の要約)
  • データを整理する・傾向を読み取る
  • 決まったやり取りに答える(問い合わせ対応の一次対応、社内の手続きに関する質問への回答など)

大切なのは、AIが「代わりに全部やってくれる」わけではないという点です。多くの場合、AIが作った下書きや案を人が確認し、必要な部分を直して仕上げる、という役割分担になります。

「効率化」と「業務改善」の違い

似た言葉に「業務改善」があります。効率化は「同じやり方のまま、時間や手間を減らすこと」を指すことが多く、業務改善は「やり方そのもの・仕事の流れを見直すこと」まで含む、より広い言葉として使われます。

AIを入れただけで満足してしまうと、「作業は速くなったが、そもそも要らない作業だった」というケースに気づけないことがあります。AIによる効率化を進めるときも、「この作業は本当に必要か」「もっと良い進め方はないか」という業務改善の視点を合わせて持つことが、効果を大きくするポイントです。

なぜ今、AIによる業務効率化が注目されているのか

AIによる業務効率化が注目される背景には、主に次の2つがあります。

背景1:働き手を確保しにくくなっていること

少ない人数で今までと同じ仕事をこなさなければならない、という悩みを抱える会社は少なくありません。人を新しく雇うことが難しいときは、今いる人の時間をどう使うかが大切になります。後で紹介する中小企業向けの調査でも、AIの導入効果の2番目に「人手不足への対応」が挙がっています。

背景2:生成AIが身近な道具になったこと

文章や画像を作る「生成AI」が、専門知識がなくても使えるところまで身近になったことも、大きな理由です。ChatGPTやGemini、Copilotのような生成AIサービスは、話しかけるように指示を出すだけで、文章の下書きや要約、アイデア出しをこなしてくれます。従来のAI(決まったルールやデータをもとに動く仕組み)のように、専門的なデータの準備やプログラムの知識がなくても使い始められる点が、業務効率化の道具として広がった理由です。

日本企業のAI活用は今どこまで進んでいるか

自社の業務にAIを取り入れることが、実際にどこまで広がっているのかを、公表されている調査で確認します。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)(2026年発表)の企業向け調査は、2026年1〜2月に、従業員10名以上で2025年までにデジタル化の取り組みを始めた企業の管理職以上を対象に行われました(日本は515件の回答)。それによると、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は86.4%で、前年度の調査(55.2%)から大きく上昇しています。

同じ調査では、企業として生成AIの活用方針を「積極的に活用する」「活用する領域を限定して利用する」と回答した割合の合計も68.9%まで上がっています。デジタル化に取り組んでいる企業にとって、AI活用はすでに「使うかどうか」ではなく「どこから使うか」を考える段階に入っていると言えます。

中小企業に絞った調査でも「業務効率化」がいちばんの目的

中小企業に絞った調査もあります。中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(全国の中小企業10,000社が対象、導入状況の回答は1,647社)の結果を見てみます。AIの導入率は20.4%で、導入を検討している企業(18.6%)を合わせると、39.0%が導入に前向きです。導入済みの企業が使うAIでもっとも多いのは生成AI(82.6%)です。

AIの導入目的は「業務効率化・作業時間の短縮」が87.0%でもっとも多く、2位の「品質向上」(32.3%)と50ポイント以上の差がありました。導入効果でも「業務効率化・作業時間の短縮」が83.2%でもっとも高く、「人手不足への対応」(33.9%)、「品質向上」(30.6%)が続きます。中小企業にとっても、AI活用のいちばんの入り口は「業務効率化」だと言えます。

総務省の調査(86.4%)と比べて導入の割合がずっと低いのは、調べた相手が違うためです。総務省の調査は「すでにデジタル化の取り組みを始めた、従業員10名以上の企業の管理職」に聞いたもので、中小機構の調査は全国の中小企業10,000社を対象にしています。どちらの数字を見るかで印象が大きく変わるため、「AIはもうどこでも使われている」とも「まだほとんど使われていない」とも言い切れないのが実情です。

AIで業務効率化するメリットとデメリット

AIによる業務効率化のメリットとデメリットを、調査で分かっていることと、一般的に言われていることに分けて整理します。

メリット:時間が減るだけでなく、手が回らなかった仕事にも取り組める

中小機構の同じ調査では、AIの導入効果を、RPAのような従来のITツールの導入効果と比べています(AIは327社、ITは900社の回答)。「業務効率化・作業時間の短縮」はAIが83.2%、ITが89.1%と、どちらも高く評価されています。一方、「付加価値の創出」はAIが22.3%で、ITの7.4%を約15ポイント上回りました。

調査は付加価値の中身までは示していませんが、文章や企画のたたき台づくりのように、これまで手が回らなかった仕事に取りかかりやすくなることも、AIならではの効果だと考えられます(ここは筆者の見方です)。

デメリット:誤りの確認、情報の扱い、使いこなしの差

同じ比較で「エラー・ミスの軽減」を効果に挙げた割合は、ITが39.8%、AIが21.4%でした。決まった手順を正確にくり返すことは従来のITツールの方が得意で、生成AIは答えに誤りが混ざることがある、という性質とも合う結果です(ここも筆者の見方です)。

このほか、一般的には次のような点がデメリットとして挙げられます。

  • 答えが正しいかを確かめる手間がかかる
  • 入力する情報によっては、情報漏洩のおそれがある
  • 使いこなせる人とそうでない人で、効果に差が出やすい
  • 本格的に使うと、毎月の利用料がかかる

以下は、メリットとデメリットを観点ごとに並べた表です(筆者の整理です)。

観点メリットデメリット・注意点
時間下書き・要約・検索の時間が減る答えを確かめる時間は残る
仕事の広がり手が回らなかった仕事に取りかかりやすくなる何に使うかを決めないと効果が見えにくい
正確さ書き方や回答の形をそろえやすい誤りが混ざることがある
人ベテランに聞く回数を減らせる使いこなしの差が出やすい
費用無料や低い料金で試せるものもある本格的に使うと利用料がかかる
情報自社の資料を活かせる入力する内容によっては漏洩のおそれがある

AIで効率化しやすい業務・しにくい業務

「AIで業務効率化」と言っても、あらゆる業務が同じように効率化できるわけではありません。ここでは、効率化しやすい業務の特徴と具体例、実際に取り組んでいる企業の事例、逆に任せない方がよい業務を整理します。

効率化しやすい業務の共通点

この後で紹介する調査や事例をもとに筆者が整理すると、効率化しやすい業務には次のような共通点があります。

  • 決まった型がある(毎回似た内容を書く、同じ手順で処理する)
  • 大量の情報から必要な部分を探す・まとめる作業である
  • 最初の案(たたき台)を作るところに時間がかかっている
  • 最終的な判断や責任は人が持ち、AIの出力はあくまで下書き・素案として扱える

逆に言えば、「毎回まったく違う内容を、一から考える」「人の感情や信頼関係が中心になる」「間違いが許されない最終判断」にあたる業務は、AIだけに任せるのに向きません。

具体的に効率化しやすい業務の例

総務省の令和8年版情報通信白書(概要)では、企業が生成AIを活用している業務の種類ごとに、導入の効果を実感している割合を調べています。結果は次のとおりです。図の注記によると、この割合は、活用状況の質問で「業務プロセスがAI中心に変更されている」「部署内の特定業務で活用している」「従業員が個人作業の効率化で活用している」を選んだ場合だけを集計したものです。

業務の種類導入効果を実感する割合
議事録・メール作成補助72.3%
社内ヘルプデスク42.7%
製造・生産39.8%
研究・商品開発39.1%
営業・販売37.5%
マーケティング・広報36.6%
カスタマーサポート33.8%
経理・財務29.7%
法務28.8%
社内システム開発・運用26.3%
調達25.9%
人事23.5%
経営20.1%

「議事録・メール作成補助」が72.3%と突出しており、2位の社内ヘルプデスク(42.7%)と30ポイント近い差があります。反対に、経営(20.1%)や人事(23.5%)は低めです。これらは最終的な判断や、一人ひとりへの配慮が求められる業務であることが関係している可能性があります(調査は理由までは示していないため、ここは筆者の見方です)。

この結果からも、「毎回似たような文章を書く」「決まった情報を整理する」といった、繰り返しの多い業務から効率化が進みやすいことがうかがえます。具体的には、次のような業務が挙げられます。

  • 議事録・メールの作成補助:会議の録音やメモをもとに議事録の下書きを作る、問い合わせへの返信文の下書きを作る
  • 資料・報告書づくり:定型の報告書やチラシ、案内文の下書きを作る
  • 情報収集・要約:長い資料やお客さまの声を読み込ませ、必要な部分を要約する
  • データの整理・一次分析:数字の並んだ表から傾向を読み取る手がかりを得る
  • 社内の問い合わせ対応:マニュアルや過去のやり取りをもとに、よくある質問に答える

企業の取り組み事例:マニュアル検索・問い合わせ対応の効率化

社内の問い合わせ対応は、表で2位だった「社内ヘルプデスク」にあたる業務です。株式会社百五銀行は、事務手続きに関する行内マニュアルの検索に生成AI「neoAI Chat」を組み合わせる仕組みを、2026年4月1日から運用しています(百五銀行の公式発表、2026年4月1日発表)。行員が確かめたいことを自然な文章で入力すると、手続きを整理した要約と、根拠になったマニュアルの箇所へのリンクが表示されます。本店と支店の間の問い合わせを減らすことで、年間15,000時間の業務量削減を見込んでいます(見込みであり、実績として確定した数字ではありません)。

同じように、マニュアル検索の効率化に取り組んでいる例として、商船三井ロジスティクス株式会社の事例もあります。物流管理システムの操作が専門的で、新人1人に約2か月、計算すると約168時間の教育を、ベテラン社員が対面で行う必要がありました。そこで、操作手順書約100件とよくある質問集をもとに答えるAI「OfficeBot」を導入しています(ネオスの導入事例ページ(2026年9月確認))。約960件の質問に対する回答の正確性は88%で、外国語や画面の画像が多い手順書からも答えが得られ、現場で疑問を解決できるようになったと紹介されています。

百五銀行は答えと一緒に根拠のマニュアルの箇所を示し、商船三井ロジスティクスは答えがどのくらい正しいかを測っています。どちらも、AIの答えをそのまま信じないための工夫をしている点が共通しています。

企業の取り組み事例:文章作成・Excel作業の効率化

もう一つ、企業にも参考になる例として、総務省の自治体DX事例集で紹介されている愛知県日進市(人口9.4万人)の取り組みがあります(総務省の事例集PDF(2026年9月確認))。行政の事例ですが、企画書やあいさつ文、メール文などの文章作成や、Excelのマクロ(作業を自動で行う命令)のコード作成は、業種を問わずどの職場にもある仕事です。

日進市は、市独自の「プロンプト集」(AIへの頼み方の例文集)を作り、聞き方のコツを段階的に学べるようにしています。特に効果があったのはExcelのマクロ作成で、ほかの使い方も合わせると、令和6年度(2024年度)の1年間で約858時間の業務時間削減効果があったと、職員への聞き取りから報告されています。生成AIを利用した職員の85%が、業務効率化の効果を実感しています。

導入費用は、初期費用が税抜20万円、1年あたりの利用料(GPT-4の利用料)が税抜84万円と紹介されています。金額はサービスや契約条件で変わるため、自社にそのまま当てはまる数字ではありませんが、費用感をつかむ手がかりにはなります。

自社の相談実例:報告書づくりと資料作成の効率化

ここで、筆者が小さな会社・お店の相談で、業務の手間を減らす目的で紹介した例を2つ取り上げます(いずれも「AI活用事例76選」で公開している実例です)。どちらも相談の場で一緒に試したり、紹介したりした内容で、その後も使い続けているかまでは確認していません。

実例1:報告書づくり専用のチャットボット(林業の会社)

林業の会社から、報告書の作成に時間がかかっているという相談を受けました。そこで、ChatGPTの「GPTs」(決まった指示や資料を覚えさせた、自分専用のChatGPTを作る機能)で、報告書づくり専用のチャットボットを作る方法を紹介しました(2025年2月の相談)。毎回同じ説明をAIに書くのではなく、決まった書き方を覚えさせておくと、同じ種類の書類をくり返し作る仕事で手間が減ります。

実例2:説明資料と打ち合わせ記録の効率化(美容の教室)

美容の教室は、生徒やお客さまが増える中で、カリキュラムの説明資料や打ち合わせの記録など、事務作業の時間を減らしたいと考えていました。そこで、読み込ませた資料をもとに答えや資料を作るAIサービス「NotebookLM」に、自社のホームページとお客さまの声を読み込ませ、説明用のスライドを作る方法を一緒に確かめました。スマートフォンで録音した打ち合わせを要約する方法もあわせて確かめています(2026年2月の相談)。自社の資料をもとに答えるAIを使うと、自社の言葉づかいに沿った資料を作りやすくなります。

これらの例と、上で紹介した企業の取り組みに共通しているのは、AIにゼロから考えさせるのではなく、「決まった型」や「自社の資料」を先に渡しておくことで、繰り返し発生する作業の手間を減らそうとしている点です。

部門ごとに見た、AIで効率化しやすい作業

ここまでの調査や事例をふまえて、部門ごとに「AIで効率化しやすい作業」と「気をつけたいこと」を筆者が整理すると、次のようになります。自社の業務に当てはめるときの目安にしてください。

部門効率化しやすい作業の例気をつけたいこと
総務・事務議事録の下書き、社内のお知らせ文、手続きの問い合わせへの回答個人情報を含む書類は入力しない
営業・販売提案書やメールの下書き、商談記録の要約価格や条件など、約束になる内容は人が確かめる
カスタマーサポート問い合わせへの回答案、よくある質問の整理お客さまに送る前に、内容が正しいかを確かめる
経理・財務表計算の関数やマクロの作成、書類の分類金額や計算結果はAIの答えをそのまま使わない
人事求人票や社内案内の下書き、研修資料のたたき台採用や評価の判断はAIに任せない
製造・現場作業手順書や日報の整理、マニュアルの検索安全にかかわる手順は現場の責任者が確かめる

どの部門にも共通するのは、「下書き・整理・検索」はAIに手伝ってもらい、「約束・判断・安全」にかかわる部分は人が受け持つという分け方です。

効率化に向いていない業務・任せてはいけない業務

一方で、次のような業務は、AIにそのまま任せるのに向きません。

  • 最終的な経営判断・重要な意思決定:AIは判断材料の整理を手伝えますが、責任を伴う最終判断は人が行う必要があります
  • 法律・契約・お金にかかわる最終確認:AIの出力に誤りが混ざる可能性があるため、専門家や責任者による確認が欠かせません
  • 信頼関係が中心になるやり取り:込み入った相談対応やクレーム対応など、相手の感情に寄り添う必要が大きい場面
  • 機密性の高い情報を扱う業務:後述する情報漏洩のリスクをふまえ、扱う情報の範囲を慎重に決める必要があります

これらの業務でも、「たたき台を作る」「情報を整理する」といった一部分だけをAIに手伝ってもらい、最終的な判断や表現は人が行う、という切り分け方であれば活用できる場合があります。

以下は、効率化しやすい業務としにくい業務の対比です。

観点効率化しやすい業務効率化しにくい業務
業務の型決まった型・繰り返しがある毎回まったく違う内容を一から考える
扱う情報大量の情報を整理・要約する少数の重要な判断材料を吟味する
責任の所在AIの出力は下書き、人が最終確認する出力自体が最終的な判断・約束になる
具体例議事録・メール・報告書・マニュアル検索経営判断、契約の最終確認、クレーム対応

AIで業務効率化を進める4つのステップ

「効率化しやすい業務が分かっても、実際にどう進めればよいか分からない」という声もよく聞きます。ここでは、多くの企業で共通している進め方を4つのステップに整理します。

ステップ1:時間がかかっている業務を洗い出す

最初に、社内で「時間がかかっている」「繰り返し発生している」業務を書き出します。誰が、どんな作業に、どれくらいの時間を使っているかを、ざっくりでよいので確認します。ここで、前の章で整理した「効率化しやすい業務の共通点」に当てはまるものを優先して選びます。

洗い出しのときに意識したいこと

一度にすべての業務を細かく調べようとすると、それ自体が大きな負担になります。まずは1つの部署、1人の担当者が「時間を取られている」と感じている業務を数個挙げるところから始めれば十分です。

ステップ2:小さく試す(スモールスタート)

いきなり全社で導入するのではなく、1つの部署、1つの業務に絞って試します。前の章で紹介した自社の相談実例のように、まずは1人か少人数で、身近なツール(ChatGPTやGemini、Copilotなど)を使って、たたき台づくりから試すのが現実的です。

使うAIツールの種類

業務効率化に使うAIツールは、大きく分けると次の4種類があります(筆者の整理です。具体的なサービスの選び方や料金は、サービスごとに公式の説明で確かめてください)。

  • 汎用の対話型AI:ChatGPTやGemini、Claude、Copilotのように、話しかけて文章の下書きや要約、アイデア出しをしてもらうもの。幅広い作業に使えるため、最初に試すのに向いています
  • ふだん使っている業務ソフトに組み込まれたAI:メールや文書作成、表計算のソフトに付いているAIの機能。いつもの画面のまま使えるため、社内に広げやすいのが特長です
  • 自社の資料をもとに答えるAI:前の章で紹介したNotebookLMや、百五銀行・商船三井ロジスティクスの例のように、読み込ませた資料をもとに答えるもの。資料を整える手間はかかりますが、社内の問い合わせ対応に向いています
  • 特定の業務向けのサービス:議事録の作成、経理、問い合わせ対応など、決まった業務のために作られたもの

小さく試す段階では、汎用の対話型AIか、すでに使っている業務ソフトのAI機能から始めると、新しい契約や準備が少なくて済みます。

試す範囲を決めるときの注意

試す段階では、入力してよい情報の範囲をあらかじめ決めておくことが大切です。ホームページに載せている情報など、外に出ても困らない資料から試すと、情報漏洩の不安を抑えながら進められます。社内の資料でも、お客さまの名前や取引の条件が入っているものは、最初は使わない方が安全です。

ステップ3:効果を確かめる

試した結果、実際にどれくらい時間が減ったか、質はどうだったかを確認します。うまくいかなかった場合も、「AIの使い方が合っていなかったのか」「そもそもAIに向かない業務だったのか」を振り返ることが、次に活かせます。

効果を確かめる指標の例

  • 同じ作業にかかる時間が、前後でどれくらい変わったか
  • 同じ時間で処理できる件数が、どれくらい増えたか
  • 担当者が感じる負担感(体感)がどう変わったか

数字で測りにくい業務であれば、担当者への聞き取りだけでも、続けるかどうかの判断材料になります。

ステップ4:うまくいった範囲を広げる

効果が確認できたら、同じ業務を担当するほかの人にも使い方を伝え、範囲を広げていきます。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)では、不動産や介護などの事業を持つ中小企業、アイニコグループの取り組みが紹介されています。専門企業の支援を受けながら、各事業部門が抱える課題を出発点に、AIで解決したい課題と目標を決め、定期的に進み具合を確かめて1年間検討しました。介護部門での送迎ルートを最適にする仕組みづくりや、不動産部門での問い合わせ対応のテンプレート化・自動化などを合わせて、全10事業部で年間2,247時間分の業務時間削減につながったと報告されています。

同じ白書は、この会社ではAIを入れる前から、業務の流れやチェックシートを整える習慣が根づいていたことが、AIツールの活用にも役立ったと紹介しています。部署ごとの課題から始めること、そして日ごろから仕事の進め方を見直す風土があることが、効果を大きくすると分かる事例です。

以下は、4つのステップの目的とやること、注意点をまとめた表です。

スクロールできます
ステップ目的やること注意点
1.洗い出す効率化の候補を見つける時間がかかっている業務を書き出す完璧に把握しようとせず、まずはざっくりで進める
2.小さく試すリスクを抑えて効果を確かめる1つの業務・少人数でツールを試す機密情報の入力範囲を最初に決めておく
3.効果を確かめる続けるかどうかを判断する時間の変化や質を振り返るうまくいかない場合の原因も整理する
4.広げる効果を全体に広げる使い方を共有し、対象を増やす一度に広げすぎず、様子を見ながら進める

AI業務効率化を成功させるための注意点

AIによる業務効率化を進めるうえで、あらかじめ知っておきたい注意点を整理します。

情報漏洩・機密情報の取り扱い

AIサービスに入力した内容が、どのように扱われるかはサービスによって異なります。お客さまの個人情報や、社外に出してはいけない情報を入力する前に、そのサービスの利用規約やプラン(法人向けプランかどうかなど)を確認することが欠かせません。

対策の考え方

判断に迷う場合は、機密性の高い情報は入力せず、公開してよい情報だけで試すという進め方が安全です。入力した内容をAIの学習に使うかどうか、どのくらいの期間保存するかは、サービスやプランによって違います。使う前に、公式の説明で確かめておきましょう。

AIの出力をそのまま使わない(内容の確認)

生成AIは、もっともらしいが誤った内容を作ってしまうことがあります。数字や固有名詞、法律・制度にかかわる内容は、AIの出力をそのまま使わず、人が事実を確認してから使う習慣が欠かせません。

対策の考え方

百五銀行の事例のように、AIの回答と一緒に「根拠になった元の資料のどこか」を確認できる仕組みにしておくと、答えを確かめやすくなります。商船三井ロジスティクスのように、答えがどのくらい正しいかを測っておくことも、どこまでAIに任せるかを決める材料になります。

従業員の理解とルールづくり

会社としてAIを使う場合、「何に使ってよいか」「入力してはいけない情報は何か」といった最低限のルールを決めておくと、担当者ごとの判断のばらつきを防げます。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)は、生成AIを活用するための環境づくりも調べています。日本で「業務の見直しやAI活用に必要なスキル・ノウハウを学ぶ環境がある」と答えた企業は39.9%でした。「社内のデータをAIに学習させたり、AIが参照できるデータベースを作ったりしている」は24.5%です。どちらも、米国・ドイツ・中国より目立って低い結果でした。ツールを導入するだけでなく、使い方を学べる環境や簡単なルールを合わせて用意することが、効果を左右するポイントになります。

経営層がかかわり、現場の課題から始める

同じ白書では、AI活用で先進的な取り組みをしている企業や有識者への聞き取りから、うまく進めている企業の共通点をまとめています。

先進的な企業に共通する進め方

白書が挙げている共通点を、短くまとめると次のとおりです。

  • 経営層がAIの効果を理解して社内外に発信し、優先して使う分野をはっきり示している
  • AIを使うことを前提に業務を見直し、その際に人とAIの役割分担を丁寧に決めている
  • 事業部門の現場が感じている課題を出発点にして、DXを進める部門が伴走している
  • 人材育成、利用のルール(ガイドライン)づくり、評価の仕組みづくりを進めている

ステップ4で紹介したアイニコグループも、経営者が「AIを前提にした働き方に変えなければ会社の将来はない」と考えてAI活用の集中プロジェクトを立ち上げ、各事業部門の課題から始めています。担当者に任せきりにせず、経営層が「どこから使うか」を示すことが、社内に広げるときの後押しになります。

段階を分けて広げる(中外製薬の例)

大企業の例ですが、白書では中外製薬の取り組みも紹介されています。誰もが使う汎用的な生成AIの利用から、AIを活用した業務そのものの変革まで、段階を分けた戦略を立てています。白書では「AI Everyday」「AI Everywhere」「AI Transformation」の3段階として紹介されています。また、人の判断や確認を適切にはさむ「ヒューマン・イン・ザ・ループ」という考え方にもとづいて、AIの管理(ガバナンス)を重視しています。

各段階の中身まで白書では詳しく書かれていませんが、規模の小さな会社でも「まず日々の作業で使う→使う範囲を広げる→業務の進め方そのものを見直す」と段階を分けて考えると、無理なく進めやすくなります(ここは筆者の整理です)。AIの出力のどこで人が確認するかを決めておくことは、前の節で見た「出力をそのまま使わない」ための具体的な方法にもなります。

よくある失敗(導入して終わりになるケース)

よくある失敗として、次のようなケースが挙げられます。

  • ツールだけ契約して、誰も使い方を確認しないまま放置してしまう
  • 一部の担当者だけが使い、社内で使い方が共有されない
  • 効果を確かめないまま「導入した」ことだけで満足してしまう

前の章の進め方(洗い出す→小さく試す→効果を確かめる→広げる)を、順を追って進めることが、こうした失敗を防ぐ基本になります。

情報不足も失敗の一因になる

中小企業基盤整備機構の実態調査(2026年3月公表)では、中小企業がAI導入で不足を感じている情報として、「成功事例や活用事例などの情報」が83.3%ともっとも高い結果になっています。何から始めればよいか分からないまま導入して終わってしまうのは、多くの企業に共通する悩みです。公表されている事例のうち、自社と近い規模・業種のものを探して、どの業務から始めたかを確かめておくことも、失敗を防ぐ助けになります。

チェックリスト:始める前に確認したいこと

  • 時間がかかっている業務を、部署やチームで書き出したか
  • 入力してよい情報・入力してはいけない情報の範囲を決めたか
  • まず試す業務を1つに絞れているか
  • AIの出力を確認する担当者・手順を決めているか
  • 効果を確かめる方法(時間・件数など)を決めているか

よくある質問(FAQ)

Q1.AIで業務効率化を始めるのに、費用はどれくらいかかりますか?

サービスの種類や契約プランによって幅が大きく、一律の相場を示すことは難しいというのが実情です。個人向けの生成AIサービスには、無料の範囲や、比較的低い月額料金で使えるプランを用意しているものもありますが、法人向けのセキュリティ機能や、業務システムと連携させる仕組みまで含めると費用は変わってきます。参考として、前の章で紹介した愛知県日進市の事例では、初期費用が税抜20万円、1年あたりの利用料が税抜84万円と紹介されています(総務省の自治体DX事例集)。ただし、これは自治体向けサービスの一例で、自社にそのまま当てはまる金額ではありません。まずは無料または低コストで試せる範囲から始め、効果を確かめてから本格的な導入を検討する進め方が現実的です。

Q2.中小企業や個人事業でも、AIによる業務効率化はできますか?

できます。中小企業基盤整備機構の実態調査(2026年3月公表、全国の中小企業10,000社対象)でも、AIを導入している中小企業の導入目的・効果の両方で「業務効率化・作業時間の短縮」がもっとも多く挙げられています。筆者が相談を受けた小さな会社・お店でも、報告書づくりや資料作成といった身近な業務から始めている例があります。規模の大小より、「小さく始めて確かめる」進め方が合っているかどうかが重要です。

Q3.何から始めればよいですか?

まずは、社内で「時間がかかっている」「毎回似た作業をしている」業務を1つ選び、身近な生成AIサービスでたたき台づくりを試すことから始めるのが現実的です。いきなり複数の業務や部署に広げるのではなく、1つの業務で効果を確かめてから広げる進め方をおすすめします。

Q4.効果が出ているかは、どう確かめればよいですか?

「作業にかかっていた時間がどれくらい減ったか」「同じ時間でどれくらい多くの件数をこなせるようになったか」など、始める前と後を比べられる指標をあらかじめ決めておくことが基本です。数字で測りにくい業務であれば、担当者の負担感や、確認・修正にかかる手間の変化を聞き取るだけでも、続けるかどうかの判断材料になります。

Q5.生成AIと、これまでの「業務効率化ツール」はどう違いますか?

RPA(決まった手順を自動でくり返す仕組み)のような従来の業務効率化ツールは、あらかじめ決めた手順どおりに正確にくり返すことが得意です。一方、生成AIは、文章の下書きや要約のように、毎回内容が変わる作業の「たたき台」を作ることが得意です。どちらが優れているというより、業務の性質によって向き不向きがあります。決まった手順はRPA、内容が毎回変わる下書きは生成AI、というように両方を組み合わせる方法もあります。RPAと生成AIを組み合わせて仕事を自動で回す考え方は、AI自動化の種類と進め方で整理しています。

Q6.社員がAIを使うことに不安があります。どう進めればよいですか?

いきなり全社に広げるのではなく、まずは情報システム担当者や一部の希望者から試し、入力してよい情報の範囲や、出力を確認する手順といった最低限のルールを決めてから広げる進め方が安心です。日進市のように、AIへの頼み方の例文集を社内で作って共有すると、使い慣れていない人も始めやすくなります。

Q7.マニュアル検索や問い合わせ対応にAIを使う場合、何を用意すればよいですか?

紹介した企業事例のように、まずは社内のマニュアルやよくある質問集を、AIが参照できる形にまとめておく必要があります。マニュアルの内容が古いままだと、AIの回答も古い情報のままになるため、もとになる資料を定期的に見直す体制もあわせて考えておくことが大切です。

Q8.AIを入れると、社員の仕事がなくなってしまいませんか?

この記事で扱っている業務効率化は、時間のかかる定型業務の一部をAIに任せ、空いた時間を人にしかできない仕事に回すことが目的です。総務省の令和8年版情報通信白書(概要)でも、先進的な企業は、AIの活用を前提に業務を見直す際に人とAIの役割分担を丁寧に設計していると紹介されています。社員に説明するときは、「どの作業をAIに任せ、空いた時間を何に使うのか」を具体的に示すと、不安を和らげやすくなります。

まとめ:AIによる業務効率化を、小さな一歩から始める

要点サマリー

  • AIによる業務効率化とは、議事録作成やメール対応、資料づくりのような時間のかかる定型業務をAIに任せ、空いた時間を人にしかできない仕事に充てることです
  • デジタル化に取り組んでいる企業では9割近く(86.4%)が何らかの業務で生成AIを使い、議事録・メール作成でもっとも効果を実感しています。全国の中小企業では、AIの導入はまだ2割ほど(20.4%)です
  • 効率化しやすいのは「決まった型がある」「情報整理が中心」の業務で、最終判断や機密性の高い業務はそのまま任せるのに向きません
  • 進め方は「洗い出す→小さく試す→効果を確かめる→広げる」の順が基本で、部署ごとの課題から始めた取り組みが合わせて大きな効果になった例もあります
  • 情報漏洩への配慮、出力内容の確認、使い方を学べる環境とルールづくりが、効果を左右する注意点です

読者タイプ別の次の行動

  • 経営者・管理職の方:まずは自社で「時間がかかっている」業務を1つ、部署やチームに書き出してもらうところから始めてみてください
  • 現場の担当者の方:身近な生成AIサービスで、いつもの資料やメールのたたき台づくりから試してみることをおすすめします
  • 情報システム担当の方:入力してよい情報の範囲や、出力内容を確認する手順など、最低限のルールづくりから着手すると、社内に広げやすくなります

さらに確かめておきたい観点

この記事の内容を自社に当てはめるときは、次の観点を確かめておくと判断しやすくなります。

  • 自社と近い業種・規模の会社は、どの業務からAIを使い始めているか
  • 使おうとしているAIサービスは、入力した内容を学習に使うか、どのくらい保存するか
  • 効率化した時間を、どの仕事に振り向けるか(空いた時間の使い道まで決めているか)
  • AIの答えを誰が、どの段階で確かめるか
小玉 健太
WebLeben代表|島根の中小企業向け AI導入・業務効率化支援
島根県松江市を拠点に、中小企業・小規模事業者のAI導入支援、業務効率化ツールの開発、AI研修、Web集客の支援を行っています。もとは日本料理店の料理人。2018年に独立し、これまでに40以上のSEO集客Webメディアサイトに携わってきました。しまね産業振興財団 よろず支援拠点 IT専門コーディネーター、しまねソフト研究開発センター(ITOC)デジタル化推進アドバイザー、邑南町しごとづくりセンター IT支援コーディネーター(2022年〜)。生成AIパスポート(GUGA)取得。相談対応は年間50事業者以上、専門家派遣は年間約12件。

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記事の作り方と、生成AIの使用について

ウェブレーベンの記事は、代表 小玉健太が企画・構成し、公開の判断と最終責任を負っています。2026年3月以降に公開した記事では、下書きの作成に生成AI(ChatGPT・Claude・Gemini)を使用しています。それ以前の記事では使用していません。

  • AIに任せた範囲:構成案の候補出し、下書きの作成、表現の整理、アイキャッチ画像の作成
  • 人が行った範囲:企画の決定、支援現場での経験・自社データの提供、事実確認、公開の判断と最終責任
  • 使っている理由:下書きにかかる時間を短くし、その分を取材と事実確認に充てるためです

記載している数値・固有名詞・制度は、公式資料で確認しています。誤りにお気づきの際はお問い合わせからご指摘ください。

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