AI開発とは?3つの種類と進め方、外注・内製の選び方と注意点をやさしく解説

AI開発とは?|3つの種類と進め方、外注・内製の選び方と注意点
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「AI開発」という言葉はよく聞くものの、何をどこまで作ることなのか、ふつうのシステム開発と何が違うのかは分かりにくいものです。社内で「AIで何か作れないか」と言われた方や、開発会社から提案を受けた方、生成AIを自社の仕組みに組み込みたい方もいるのではないでしょうか。

結論から言うと、AI開発とは、データから学ばせたAIや、生成AIなどの既存のAIを使って、特定の業務や課題を解く仕組みを作ることです。 ふつうのシステム開発と違い、作ってみるまで精度(どのくらい正しく見分けたり予測したりできるか)が分からないため、小さく試して確かめながら、段階を分けて進めるのが基本です。

この記事では、経済産業省・総務省・文化庁などが公表している資料をもとに、次のことを整理します。情報は2026年9月時点のものです。

  • AI開発の意味と、ふつうのシステム開発との違い
  • AI開発の3つの種類(学習させて作る・生成AIを組み込む・既製のサービスを設定して使う)と、向いている課題
  • 構想からPoC(小さな試作での検証)・本開発・運用までの進め方と、期間や費用が決まる要因
  • 外注・内製・共同開発の選び方と、契約で確かめたいこと
  • 著作権・個人情報・AI推進法など、開発するときに気をつけたいルール
目次

AI開発とは?ふつうのシステム開発との違い

AI開発の意味:データや既存のAIで、課題を解く仕組みを作ること

AI(人工知能)は、人が行っている「見分ける」「予測する」「文章を作る」といった知的な作業の一部を、コンピューターで行えるようにする技術です。AI開発で作るものは、大きく分けて次の2つです。

  • 学習済みモデル:たくさんのデータからパターンを学ばせた、AIの中心になる部分です。データから学ばせる方法を機械学習といい、脳の神経のつながりをまねた仕組みを何層にも重ねて学ばせる方法を、深層学習(ディープラーニング)と呼びます。
  • AIを使う仕組み(システム):学習済みモデルや生成AIを、画面やデータの保存先、今ある業務のシステムとつなぎ、現場の人が使える形にしたものです。

最近は、ChatGPTやGeminiのような生成AI(文章や画像などを新しく作るAI)を外から呼び出して使う形の開発もあります。この場合、AIそのものは作らず、「AIを使う仕組み」を作ることが開発の中心になります。

ふつうのシステム開発との違い

ふつうのシステム開発では、「この入力なら、この結果を返す」という決まりを人が書き、そのとおりに動くかを確かめます。AI開発では、この決まりの一部をデータから学ばせます。

経済産業省のAI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編、平成30年6月)は、学習済みモデルを作る開発には、ふつうの開発と比べて次の特徴があるとしています(筆者の要約)。

  • 学習済みモデルの中身や性能が、契約を結ぶ時点でははっきりしないことが多い
  • 中身や性能が、学習に使うデータに左右される
  • 作るときのノウハウが、とくに大事になる
  • できあがったものを、ほかの用途にも使いたいという需要がある

実務では、ここから次の3つの違いが生まれます。

作ってみるまで精度が分からない

たとえば不良品を見分けるAIでは、目標の精度を決めても、手元のデータで実際に学ばせてみるまで、そこに届くかは分かりません。同じガイドラインは、学習済みモデルがどう作られ、どんな性質を持つかを、人が直感的に理解しにくい場合が多いとも述べています。「仕様どおりに作れば完成」とは言い切れないのが、AI開発の難しいところです。

結果がデータの量と質に左右される

同じ作り方でも、学ばせるデータが少なかったり、偏っていたり、誤りが多かったりすると、精度は上がりません。そのため、プログラムを書く時間より、データを集めて整える時間のほうが長くなることがあります。

作った後も手入れが続く

売れ筋や季節、作る製品が変われば、過去のデータで学ばせたAIの精度は落ちることがあります。本番で使い始めた後も、精度を見守り、新しいデータで学ばせ直す手入れが続きます。

観点ふつうのシステム開発AI開発
動きの決め方人が決まりを書く決まりの一部をデータから学ばせる
仕様の決まり方最初にほぼ決めきれる試しながら決まっていく
確かめること決まりどおりに動くかどのくらい正しく見分け、予測できるか
完成した後変えなければ同じ動きを続けるデータの変化で精度が変わることがあり、見直しが要る

AIに関わる3つの立場:開発する・提供する・使う

総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版、令和8年3月31日公表)は、AIに関わる事業者を3つの立場に分けて、それぞれが気をつけることを整理しています。本編での意味は次のとおりです。

立場ガイドラインでの意味(要約)当てはまる例
AI開発者AIシステムを開発する事業者(AIを研究開発する事業者を含む)AIを作る開発会社、自社でAIを作る会社
AI提供者AIシステムを製品や今あるシステム、業務の流れに組み込み、サービスとしてAI利用者などに提供する事業者AIを組み込んだサービスを、お客さまに出す会社
AI利用者事業活動の中で、AIシステムやAIサービスを利用する事業者AIを社内の業務で使う会社

1つの会社が、いくつかの立場を兼ねることもあります。開発会社にAIを作ってもらい、それを組み込んだサービスを自社のお客さまに出すなら、自社は「AI提供者」にもあたります。まず自社がどの立場になるかを確かめておくと、後でルールを調べるときに迷いにくくなります。

AI開発の3つの種類と、向いている課題

AI開発と一口に言っても、何をどこまで作るかで、必要なデータや期間は大きく変わります。ここでは、発注や検討をする側から見て分かりやすいよう、3つの種類に分けて整理します(分け方は筆者の整理です)。

自社のデータで学習させて作る(予測・画像認識など)

1つ目は、自社にたまっているデータをAIに学ばせて、専用の学習済みモデルを作る開発です。生成AIが広まる前の資料(後で紹介する経済産業省の契約ガイドラインなど)が「AI開発」として扱っているのも、主にこの形です。

向いているのは、同じ種類の判断を、たくさん繰り返す業務です。

  • 予測:過去の売上や来店数から、来週の注文量を見込む
  • 画像認識:製品の写真から、傷や汚れのある不良品を見分ける
  • 異常の検知:機械の音や振動のデータから、いつもと違う動きを見つける

この形では、学ばせるためのデータが欠かせません。不良品を見分けるAIなら、良品と不良品の写真を集め、1枚ずつ「良品」「不良品」の印(ラベル)を付ける作業が要ります。データを集めて整える手間が大きく、ほかの2つの種類より時間がかかりやすい形です。

生成AIを業務の仕組みに組み込む(APIとRAG)

2つ目は、ChatGPTやGeminiのような生成AIを、自社の業務の仕組みにつなぐ開発です。AIそのものは作らず、生成AIの会社が用意した窓口(API)から呼び出して使います。APIとは、外のサービスの機能を、自社のプログラムから使うための決まった出入り口のことです。

よく使われるのが、RAG(検索拡張生成)という作り方です。社内の規則集やマニュアルを先に検索し、見つかった部分をもとに生成AIに答えさせます。生成AIが知らない自社の決まりについても、資料にもとづいて答えられるようになります。

向いているのは、次のような文章を扱う業務です。

  • 社内の規則や手続きについての問い合わせに答える
  • 日報・見積もり・メールの下書きを、決まった形で作る
  • 届いた問い合わせを内容で分け、担当者に回す

学習させて作る形に比べると、早く試せます。一方で、生成AIはもっともらしい誤りを答えることがあるため、人が確かめる手順を仕組みの中に入れておく必要があります。使った量に応じて利用料がかかる点も、あらかじめ見込んでおきます。

送ったデータは、AIの学習に使われるのか

生成AIを組み込むときによく出る心配が、「送った社内の情報が、AIの学習に使われないか」です。主な会社の公式の説明(2026年9月時点)は次のとおりです。

  • OpenAIは、APIのデータの扱いについての説明で、2023年3月1日以降にAPIへ送られたデータを、自社のモデルの学習や改善に使わないとしています。ただし、不正な利用を見張るための記録は、初期設定で最長30日保存されます。
  • Googleは、Google Cloudの説明で、事前の許可や指示がないかぎり、顧客のデータをAIのモデルの学習や調整に使わないとしています。
  • Microsoftは、Microsoft Foundry(Azure OpenAIを含む)の説明で、送った指示(プロンプト)と出力を、基盤モデルの学習や改善に使わないとしています。

これらは、会社向けのAPIやクラウドのサービスとして使う場合の説明です。個人向けのサービスなどでは扱いが違うことがあるので、使うサービスと契約の種類ごとに、規約を確かめてください。

既製のAIサービスを設定して使う(作らない選択肢)

3つ目は、すでに売られているAIのサービスを選び、自社に合わせて設定して使う方法です。厳密には「開発」ではありませんが、AI開発を考えるときには、まず比べておきたい選択肢です。

たとえば、会議の録音から議事録を作るサービス、問い合わせに答えるチャットボットのサービス、会計ソフトや業務ソフトに付いているAIの機能などがあります。

多くの会社に共通する業務なら、既製のサービスで足りることがよくあります。作るための費用と期間がかからず、すぐに試せるのが利点です。反対に、自社だけの特殊な業務や、社内のほかのシステムと細かくつなぎたい場合には、合わないことがあります。

3つの種類を比べる:自社の課題にはどれが合うか

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種類向いている課題主に必要なもの始めるまでの手間気をつけること
学習させて作る予測、画像での見分け、異常の検知正解の印が付いた、まとまった量のデータ大きいデータを集めて整える時間がかかる。作った後も精度の見直しが要る
生成AIを組み込む問い合わせへの回答、文書の下書き、仕分け社内の資料、つなぐ先のシステム、生成AIの利用契約中くらい誤った答えを人が確かめる手順が要る。利用料が使った量で変わる
既製のサービスを設定する議事録、チャットボット、会計など、多くの会社に共通する業務サービスの利用契約と設定小さい自社だけの業務には合わないことがある。データの扱いを規約で確かめる

選ぶ順番の目安

筆者は、次の順で考えるのがよいと考えています(筆者の整理です)。

  1. まず、既製のサービスで足りないかを調べる
  2. 足りなければ、生成AIを組み込んで解けないかを考える
  3. それでも解けない予測や見分けの課題なら、自社のデータで学習させて作る

実際の開発では、3つを組み合わせることもよくあります。たとえば、画像で不良品を見分けるAIを作り、その結果の報告文を生成AIに下書きさせる、という形です。

AI開発の進め方:構想からPoC・本開発・運用まで

学習済みモデルを作るAI開発について、経済産業省の契約ガイドライン(AI編、平成30年6月)は、「アセスメント」「PoC」「開発」「追加学習」の4つの段階に分けて進める「探索的段階型」という進め方を示しています。段階ごとに結果を確かめ、次に進むかを決めながら進める方法です。

経済産業省が中小企業向けにまとめたAI導入ガイドブックも、「構想」「設計」「検証」「実装・運用」の順で進めるとしています。呼び方は違いますが、小さく確かめてから広げる考え方は同じです。どちらも生成AIが広く使われる前の資料なので、主に「学習させて作る」開発を想定しています。ここでは、2つを合わせて4つの段階で説明します。

段階1:構想とアセスメント(課題とデータを確かめる)

最初の段階では、AIで何を解きたいのかを決め、そのためのデータがあるかを確かめます。

  • 解きたい課題を1つの業務に絞る(例:部品の注文量の予測、出荷前の傷の見分け)
  • その課題に、いまどれだけの時間や費用がかかっているかを数える
  • 使えるデータが、どこに、どんな形で、どれくらいあるかを確かめる
  • 「どのくらいの精度なら業務で使えるか」の目安を決める

契約ガイドラインでは、この段階(アセスメント)を、発注する側から一定量のデータを受け取り、学習済みモデルを作れる見込みがあるかを前もって確かめる段階としています。データについての打ち合わせや検証に、有償の契約を結んで数か月かけることも珍しくない、とも書かれています。

段階2:PoC(小さく試して、続けるかを決める)

PoC(概念実証)とは、本番の開発に進む前に、手元のデータを使って小さく試し、効果が見込めるかを確かめることです。契約ガイドラインは、PoCを、学習済みモデルづくりを先に進めるかを検証する段階としています。

製造業向けのAI導入ガイドブック(需要予測・製造業、2022年公表。国立国会図書館の保存版)は、検証の工程は2〜3か月ほどで進めるのが一般的とし、最初の費用はできるだけ抑えるよう勧めています。

PoCで大事なのは、始める前に「どうなったら次に進み、どうなったらやめるか」を決めておくことです。基準を決めないまま試すと、結果の良し悪しを判断できず、試作を繰り返すだけになりやすくなります。

段階3:本開発(業務で使える形にする)

PoCで見込みが立ったら、本番で使う学習済みモデルを作り、業務の仕組みに組み込みます。契約ガイドラインでは、この段階を、学習用のデータを使って実際に学習済みモデルを作る段階としています。

実務では、学習済みモデルを作ることに加えて、次のような作業が必要になります。

  • 現場の人が使う画面を作る
  • 今ある業務のシステムや、データの保存先とつなぐ
  • 本番に近いデータで、精度と使い勝手を確かめる
  • 誤った結果が出たときに、人が気づいて直せる手順を作る

段階4:運用と追加学習(精度を保ち、育てる)

使い始めた後は、精度が落ちていないかを見守り、必要に応じて新しいデータで学ばせ直します。契約ガイドラインでは、納品された学習済みモデルに、追加のデータで学習させる段階を「追加学習段階」としています。

小売業・卸売業向けのAI導入ガイドブック(需要予測、2021年3月発行。国立国会図書館の保存版)は、需要予測では、数字で見える効果が安定するまでに、一般に半年から1年ほどかかる(業種や製品で異なる)としています。使い始めてすぐに効果を判断せず、見守る期間を計画に入れておくと安心です。

4つの段階を表で整理する

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段階目的主にやること次に進むかの判断の例
1 構想とアセスメント課題と、使えるデータを確かめる課題を1つに絞る、データの置き場所と形を調べる、目標の精度を決める必要なデータがそろいそうか
2 PoC小さく試して、効果の見込みを確かめる手元のデータで試作し、精度と業務での使い方を確かめる決めておいた基準に届いたか
3 本開発業務で使える形にする学習済みモデルを作り、画面や今あるシステムとつなぐ本番に近い条件で使えるか
4 運用と追加学習精度を保ち、育てる精度を見守り、新しいデータで学ばせ直す効果が続いているか、作り直しが要るか

生成AIを組み込む開発や、既製のサービスを使う場合も、「小さく試してから広げる」考え方は同じです。ただし、学習済みモデルを作らない分、段階1と段階2を短くできることがあります。

筆者が関わった小さな開発で分かったこと

ここでは、筆者が関わった開発のうち、すでに公開している例から、進め方について分かったことを2つ紹介します。規模は小さいですが、「小さく試す」ときの参考になると思います。

データの形と探し方を先に確かめた例(製造業のS社)

製造業のS社では、全国の拠点から届く見積もりの依頼ごとに、過去の似た案件を探す手間がかかっていました。そこで、見積もり依頼書のPDFを読み取り、書き方の違いをそろえてから、似た案件を2段階で探す仕組みを、まずデモ版として作りました。

このデモ版では、生成AIなどの外のAIはまだつないでいません。先に確かめたかったのは、データがどんな形で残っているかと、似た案件をどう探せば現場で役に立つかです。高度なAIを入れる前に、データの形と使い方を確かめることが、段階1と段階2の中身にあたります。

AIの部分より「周りの仕組み」を作る量が多かった例(Webアプリ)

もう1つは、スマートフォンで撮ったペットの動画と音声を、生成AI(GoogleのGemini)で読み解き、気持ちを推測して伝えるWebアプリです。

作ってみて分かったのは、生成AIを呼び出す部分より、ログイン、月額の課金、データの保存といった「周りの仕組み」を作る量のほうが多かったことです。生成AIを組み込む開発では、AIの部分だけで見積もると、全体の手間を小さく見てしまいやすい点に気をつけてください。生成AIを組み込んだアプリの作り方・進め方と公開前の注意点は、AIアプリ開発の進め方で詳しく整理しています。

期間と費用は何で決まるか

期間や費用は、作るものによって大きく変わるため、一律には言えません。目安を考えるときは、次の要因を見ます(一般的な考え方です)。

  • 種類:既製のサービスを設定するのか、生成AIを組み込むのか、学習させて作るのか
  • データの準備:データがそろっているか、印付けや整理にどれだけ手間がかかるか
  • 求める精度:高い精度を求めるほど、試す回数と必要なデータが増える
  • つなぐ先の数:今ある業務のシステムや、作る画面の数
  • 運用の体制:使い始めた後の見守りや、学ばせ直しを誰が行うか

AIの導入にかかる費用の内訳(最初にかかる費用・使い続ける費用・追加の費用)や相場の考え方は、AI導入の費用についての記事で整理しています。

AI開発は外注か内製か:体制と依頼先の考え方

内製・外注・共同開発の違い

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進め方誰が作るか良いところ気をつけること
内製社内の人が作る業務の知識と技術が社内に残る。直したいときにすぐ直せるAIに詳しい人を育てるか、採るまでに時間がかかる
外注開発会社が作る社内に詳しい人がいなくても、早く形にできる任せきりにすると、目的からずれたものになりやすい
共同開発社内と社外で役割を分けて作る業務の知識は社内から、技術は社外から持ち寄れる誰が何をするかと、データの扱いを最初に決めておく

経済産業省の製造業向けのAI導入ガイドブック(需要予測・製造業)は、自社の担当者だけで進める形や、外部のAI人材・開発会社に頼む形を比べています。そのうえで、頼む場合も「任せきりにせず、担当者も一緒に進めていくことが重要」としています。どの形でも、自社の業務担当者が関わることは欠かせない、という考え方です。

筆者が公表資料から集めたAI開発事例109件を作り方で分けると、外部の会社や大学と一緒に作る共同開発が45件でいちばん多くなりました。自社開発は32件、外部の会社に頼んだり外部の仕組みを使ったりした例は11件、作り方を公表していない例は21件です。大きな会社でも、社外と組んで作る形が多く選ばれています。

社内に必要な3つの役割

外注する場合でも、社内には次の役割が要ります。

  • 業務を知っている人:どの作業に困っていて、どんな結果なら使えるかを判断する
  • データを用意する人:必要なデータを探し、整えて渡す
  • 決める人:続けるか、やめるか、広げるかを判断し、予算を持つ

AIに詳しい人は、多くの会社で足りていません。IPA(情報処理推進機構)のDX動向2026(2026年4〜6月に調査、1,799社が回答)では、AIの導入・運用の課題として「専門人材が不足している」が50.1%で最も多くなりました。中小企業基盤整備機構の中小企業のAI等の利活用に係る実態調査でも、AIの導入の課題として「社内のAIノウハウ不足」が42.0%、「社内のAI人材不足」が38.8%と上位に入っています。

内製するなら知っておきたい技術と道具

社内で作る場合は、作り込める自由度と、始めやすさの兼ね合いで道具を選びます。先ほどの製造業向けのガイドブックは、自社でAIを作るときの道具を次の3つに分けて比べています(表は筆者の要約で、ガイドブックが作られた当時の整理です)。

道具の種類特徴向いている人
機械学習を自動で行うツール(AutoML)画面の操作で、プログラムを書かずにAIを作れるデータをある程度扱える担当者
プログラミング言語や統計解析のソフト(PythonやRなど)作り方の制約がなく、細かく作り込める専門知識とプログラミングの技術がある人
使った分だけ払うクラウドの機械学習サービスクラウドで動くので、システムを作るための最初の投資がいらないそのサービスの使い方を知っている人

生成AIを組み込む開発では、これに加えて、生成AIの会社が用意するAPIの使い方や、社内の資料を検索しやすい形に整える技術が要ります。どの道具を使う場合も、業務の知識と、データを正しく扱う力が土台になります。

開発会社に依頼する前に決めておくこと

依頼する前に、社内で次のことを決めておくと、提案や見積もりを比べやすくなります。

  1. 解きたい課題と、その課題にいまかかっている時間や費用
  2. 使えるデータの種類・量・置き場所と、社外に出してよい範囲
  3. 「どのくらいの精度なら使えるか」と、PoCでやめる基準
  4. PoCの期間と、予算の上限
  5. 完成後に使い続け、見直す社内の担当者

中小企業基盤整備機構の調査のポイント(2026年3月)では、AIやITの導入にあたって「適切なベンダーや製品を選定する情報」が足りないと答えた中小企業が79.8%にのぼりました。何を頼みたいかを先に言葉にしておくと、複数の会社の提案を同じ物差しで比べられます。

契約で確かめたいこと:段階ごとの契約・権利・データ

契約ガイドライン(AI編)は、学習済みモデルを作る開発では、どの段階でも、完成を約束する請負型より、作業を行うことを約束する準委任型の契約がなじむとしています。性能を前もって約束しにくい、というAI開発の特徴に合わせた考え方だと筆者は理解しています。

あわせて、契約の前に次の点を確かめておきます。

  • 段階ごとの契約:ガイドラインは、段階に合わせて使う秘密保持契約書・導入検証契約書・ソフトウェア開発契約書のひな形を示しています
  • 成果物の権利と使い方:学習済みモデルやプログラムがどちらのものになるかだけでなく、それぞれを何に使ってよいか(利用条件)を細かく決める、という考え方が示されています
  • 渡すデータの扱い:渡したデータを開発会社がほかの目的に使ってよいか、終わった後に消すか
  • 精度の扱い:精度を約束するのか、目標として努力するのか

契約の中身は、会社や案件ごとの事情で変わります。金額が大きい場合や、判断に迷う場合は、弁護士などの専門家にも確かめてください。

AI開発で気をつけたい法律・ルールとよくある失敗

総務省の令和8年版情報通信白書の企業調査(2026年1〜2月)で、日本の企業が生成AIの活用で心配しているリスクを見ると、「社内情報の漏洩などのセキュリティリスク」が46.4%で最も多くなりました。次いで「出力結果の精度」「著作権等の権利の侵害」が続きます。この調査の対象は、従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取り組みを始めた企業の管理職以上の人です。ここでは、AI開発にかかわるルールのうち、とくに押さえておきたい3つと、よくある失敗を整理します。法律の解釈は個別の事情で変わるため、ここで紹介するのは一般的な考え方です。

学習に使うデータと著作権

文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、令和6年3月にAIと著作権に関する考え方についてを取りまとめました。この考え方の本文では、生成AIと著作物の関係を「開発・学習段階」と「生成・利用段階」に分けて考えています。

  • 開発・学習段階:AIの学習のように、情報を解析するための利用は、著作権法第30条の4の「作品を味わう(享受する)ことを目的としない利用」に当たると考えられています。この条文にあたる利用は、必要と認められる限度で、著作権者の許諾を得ずに行えます。ただし、享受する目的もあわせ持つ場合や、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この条文の対象になりません
  • 生成・利用段階:AIが作ったものが既存の作品と似ていて(類似性)、その作品をもとにしている(依拠性)と認められると、著作権の侵害になりうるとしています

なお、この考え方そのものに法的な拘束力はなく、特定の生成AIについて確定的な判断を示すものでもない、と本文に書かれています。学習に使うデータを集めるときは、出どころと利用条件を記録しておくと、後から説明しやすくなります。

個人情報と、外部のAIにデータを送るときの注意

個人情報保護委員会は、令和5年6月2日に生成AIサービスの利用に関する注意喚起等を出しています。事業者に向けては、主に次の2点を求めています。

  • 個人情報を含む指示(プロンプト)を生成AIのサービスに入れる場合は、決めてある利用目的を達成するために必要な範囲かを、十分に確かめること
  • 本人の同意なく個人データを含む指示を入れる場合は、サービスを提供する事業者が、その個人データを機械学習に使わないことなどを、十分に確かめること

生成AIを組み込むシステムでは、どのデータを、どの会社のサービスに送るかを設計の段階で決めておきます。お客さまの名前や連絡先などは、送る前に消したり伏せたりする仕組みを入れる方法もあります。

AI推進法とAI事業者ガイドライン

「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI推進法、AI法とも呼ばれます)は、内閣府の説明によると、令和7年(2025年)6月4日に公布・一部施行され、同じ年の9月1日に全面施行されました。

法律の条文では、AIの研究開発や活用が不正な目的や不適切な方法で行われると、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害などを助長するおそれがあるとしています。そのうえで、AIを活用する事業者には、AIの活用で事業の効率化などに努めることと、国や自治体の施策に協力することを定めています(第7条)。この法律にもとづく「人工知能基本計画」は、内閣府のAI戦略のページによると、2026年7月14日に第Ⅱ期が閣議決定されています。

具体的に何に気をつければよいかは、前の章で紹介したAI事業者ガイドライン(第1.2版)が、AI開発者・AI提供者・AI利用者の立場ごとに整理しています。開発を頼む側も、自社にあたる立場の部分を一度読んでおくと、開発会社との話し合いがしやすくなります。

よくある失敗と誤解

中小企業基盤整備機構の調査で、中小企業にAIを導入した後の運用の課題を聞いた設問を見ると、最も多いのは使い続ける費用の高さで、44.0%でした。担当者の負担が重いこと(29.1%)や、社員の間で使われないこと(28.9%)も上位に入っています。作った後のことまで考えておかないと、せっかくのAIが使われなくなるおそれがあります。

失敗1:PoCを繰り返すだけで本番に進まない

試作では良い結果が出たのに、本番の開発に進む判断ができず、条件を変えた試作を繰り返してしまう失敗です。PoCを始める前に、次に進む基準とやめる基準、決める人を決めておくと防ぎやすくなります。

失敗2:作ったのに現場で使われない

現場の困りごとを聞かずに作ったり、今の仕事の流れに合わない画面にしたりすると、使われなくなります。PoCの段階から、実際に使う人に触ってもらい、意見を取り入れます。使い始めた後の問い合わせ先や、使い方の説明も用意しておきます。

誤解1:開発会社に頼めば、精度を保証してもらえる

学習済みモデルの性能は、作ってみるまで分かりにくいものです。そのため、契約では精度を約束しない形になることもあります。精度は「目標」として共有し、届かなかったときにどうするかを、契約の前に話し合っておきます。

誤解2:生成AIがあれば、開発はいらない

生成AIは、そのままでも文章の下書きや要約に使えます。ただし、自社の資料にもとづいて答えさせたり、業務のシステムとつないだりするには、その部分を作る必要があります。生成AIの登場で、開発がいらなくなったのではなく、作る部分が変わったと考えると分かりやすいでしょう。

チェックリスト:AI開発を始める前に

  • 解きたい課題を、1つの業務に絞って言葉にしたか
  • その課題に、どれくらいの時間や手間がかかっているかを数えたか
  • 既製のサービスで足りないかを調べたか
  • 使えるデータがどこに、どんな形で、どれくらいあるかを確かめたか
  • データに個人情報や、他社から預かった情報が含まれていないかを確かめたか
  • 「どのくらいの精度なら使えるか」と、やめる基準を決めたか
  • PoCの期間と、予算の上限を決めたか
  • 完成後に使い続け、見直す担当者を決めたか
  • 学習済みモデルやデータの権利と使い方を、契約でどう決めるかを確かめたか
  • 最終的な判断を人が行う場面を決めたか

AI開発についてよくある質問(FAQ)

AI開発には、どれくらいの期間がかかりますか?

作るものによって大きく変わります。学習させて作る開発の例では、経済産業省のAI導入ガイドブック(需要予測・製造業)が、検証(PoC)の工程は2〜3か月ほどで進めるのが一般的としています。本開発や、効果が安定するまでの期間はその後に続きます。既製のサービスを設定して使うだけなら、早ければその日から試せます。

AI開発の費用は、どれくらいかかりますか?

種類、データの準備の手間、求める精度、つなぐ先の数によって大きく変わるため、一律には言えません。費用の内訳と、費用が変わる要因は、AI導入の費用についての記事で整理しています。見積もりを取るときは、PoCと本開発、使い始めた後の費用を分けて出してもらうと比べやすくなります。

データが少なくても、AI開発はできますか?

学習させて作る開発では、データが少ないと精度が出にくくなります。ただし、生成AIを組み込む形や、既製のサービスを使う形なら、自社で大量のデータを用意しなくても始められることがあります。まずは手元にあるデータで何ができるかを、構想とアセスメントの段階で確かめるのが近道です。

小さな会社でも、AI開発に取り組めますか?

取り組めます。ただ、今のところ導入している中小企業は多くありません。中小企業基盤整備機構の調査のポイント(2026年3月)では、AIを導入している中小企業は20.4%でした。小さな会社ほど、既製のサービスや生成AIの組み込みから小さく始め、効果を確かめてから広げる進め方が合っていると筆者は考えています。

プログラミングができなくても、AI開発に関われますか?

関われます。AI開発には、業務の困りごとを言葉にする人、データを用意する人、続けるかどうかを決める人が欠かせません。プログラムを書くのは開発会社や社内の技術者でも、何を作るかを決めるのは、業務を知っている人です。

AI開発を学ぶには、何から始めればよいですか?

目的によって入口が変わります。発注や検討をする立場なら、この記事で紹介した契約ガイドラインや、自社に近い業種のAI開発の事例を読むことから始めると、全体の流れがつかめます。自分で作りたい場合は、プログラミング言語のPythonと機械学習の基礎を学び、生成AIのAPIを使った小さなプログラムを作ってみるのが一般的な入口です。

AI開発とAI導入は、何が違いますか?

はっきりした決まりはありませんが、一般に「AI開発」はAIや、AIを使う仕組みを作ることを指し、「AI導入」は、作ったものや既製のサービスを業務に取り入れて使えるようにすることまでを含めて指すことが多い言葉です。この記事で紹介した進め方は、どちらにも当てはまります。

まとめ:AI開発は「作るかどうか」から小さく確かめる

要点サマリー

  • AI開発とは、データから学ばせたAIや生成AIなどを使って、特定の課題を解く仕組みを作ることです
  • ふつうのシステム開発と違い、作ってみるまで精度が分からず、結果がデータに左右され、作った後も手入れが続きます
  • 種類は「学習させて作る」「生成AIを組み込む」「既製のサービスを設定する」の3つで、作らずに済むかから考えます
  • 進め方は、構想とアセスメント、PoC、本開発、運用と追加学習の4段階で、段階ごとに続けるかを決めます
  • 外注する場合も任せきりにせず、契約では段階ごとの契約・権利・データの扱いを確かめ、著作権や個人情報のルールも押さえます

読者タイプ別の次の行動

  • 経営者・事業責任者:解きたい課題を1つ選び、今かかっている時間や費用を数えてもらう。PoCの予算の上限と、やめる基準を決める
  • 情報システムの担当者:使えるデータの置き場所と形、社外に出してよい範囲を洗い出す。既製のサービスで足りないかを調べる
  • 現場の担当者:困っている作業と、どんな結果なら使えるかを書き出す。PoCで試作を触り、意見を伝える
  • これから学ぶ人:Pythonと機械学習の基礎を学び、生成AIのAPIで小さなプログラムを作ってみる

さらに確かめておきたい観点

  • 自社に近い業種で、どんなAI開発が行われ、どの段階まで進んでいるか
  • 使う予定の生成AIのサービスが、送ったデータをどう扱うか(契約の種類ごとの規約)
  • AI事業者ガイドラインのうち、自社の立場(開発者・提供者・利用者)にあたる部分
  • 学習や入力に使うデータの権利と、個人情報の扱い
  • 使い始めた後の費用と、見守りの体制
小玉 健太
WebLeben代表|島根の中小企業向け AI導入・業務効率化支援
島根県松江市を拠点に、中小企業・小規模事業者のAI導入支援、業務効率化ツールの開発、AI研修、Web集客の支援を行っています。もとは日本料理店の料理人。2018年に独立し、これまでに40以上のSEO集客Webメディアサイトに携わってきました。しまね産業振興財団 よろず支援拠点 IT専門コーディネーター、しまねソフト研究開発センター(ITOC)デジタル化推進アドバイザー、邑南町しごとづくりセンター IT支援コーディネーター(2022年〜)。生成AIパスポート(GUGA)取得。相談対応は年間50事業者以上、専門家派遣は年間約12件。

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そんな段階でも大丈夫です。

WebLebenでは、AI活用支援、業務効率化ツール開発、Webアプリ開発、生成AI研修まで一貫して対応しています。

  • AIをどう業務に取り入れるべきか相談したい
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  • まずは話だけ聞いてみたい

初回のご相談は無料です。その場で何かを決めていただく必要はありません。

お困りのことがあれば、ぜひご相談ください。

メールでのご連絡には、通常3〜5営業日以内に返信します。

記事の作り方と、生成AIの使用について

ウェブレーベンの記事は、代表 小玉健太が企画・構成し、公開の判断と最終責任を負っています。2026年3月以降に公開した記事では、下書きの作成に生成AI(ChatGPT・Claude・Gemini)を使用しています。それ以前の記事では使用していません。

  • AIに任せた範囲:構成案の候補出し、下書きの作成、表現の整理、アイキャッチ画像の作成
  • 人が行った範囲:企画の決定、支援現場での経験・自社データの提供、事実確認、公開の判断と最終責任
  • 使っている理由:下書きにかかる時間を短くし、その分を取材と事実確認に充てるためです

記載している数値・固有名詞・制度は、公式資料で確認しています。誤りにお気づきの際はお問い合わせからご指摘ください。

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