「AIの利用率は、実際どのくらいなのか」「島根の会社は、全国と比べて遅れているのか」。社内でAIの話が出たとき、最初に知りたくなるのがこの数字です。
結論から言うと、帝国データバンクが2026年3月に全国の企業に聞いた「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」では、生成AI(文章や画像などを作り出すAI)を業務で「活用している」企業は34.5%でした。島根県の企業は32.3%で、全国をやや下回っています。
個人では、総務省の「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表)によると、58.8%の人が生成AIを使ったことがあります。
ただし「AIの利用率」は、会社を数えるか人を数えるか、「使っている」をどこまで含めるかによって、2割ほどから8割台まで大きく変わります。この記事では、2026年10月1日時点で公表されている公的な調査と大規模な民間調査をもとに、次のことを整理します。
- 全国・島根・個人のAIの利用率と、調査によって数字が違う理由
- AIの利用率が最も高いのはどこか(地域・会社の規模・年代)
- 業種ごとのAIの利用率と、仕事との相性
- AIの利用率が低い理由と、島根の数字の読み方
- 会社でAIを使い始めるときの手順とチェックリスト
AIの利用率は?企業は全国34.5%・島根32.3%、個人は58.8%
まずは、よく引用される3つの数字(全国の企業・島根の企業・個人)を押さえます。どれも「生成AI」を使っているかを聞いた数字です。
企業のAI利用率は34.5%(帝国データバンク、2026年3月調査)
帝国データバンクの「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月14日公表)は、全国2万3,349社に聞き、1万312社が答えた調査です。生成AIを業務で「非常に活用している」が4.4%、「やや活用している」が30.2%で、この2つを合わせた34.5%が「活用している」企業です。
一方で、「あまり活用していない」が13.6%、「ほとんど活用していない」が23.3%あり、使ってはいても活用しきれていない会社が合わせて4割近くあります。「いまは活用していないが、今後の活用を検討している」は14.2%、「今後も活用する予定はない」は8.6%でした。
使っている会社の手ごたえは強く、活用している企業の86.7%が「業務への効果が出ている」と答えています。「効果が出ていない」という答えは、ごくわずかでした。
島根県のAI利用率は32.3%、中国5県の中では4番目
島根県の数字は、帝国データバンク広島支店がまとめた「中国地方・生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年6月5日公表)の県別の表に載っています。島根県の企業で生成AIを「活用している」のは32.3%で、答えた93社のうち30社でした。中国地方の5県を並べると、次のとおりです。
| 地域 | 生成AIを「活用している」企業 | 答えた企業の数 |
|---|---|---|
| 山口県 | 36.9% | 122社 |
| 広島県 | 34.7% | 236社 |
| 岡山県 | 32.9% | 152社 |
| 島根県 | 32.3% | 93社 |
| 鳥取県 | 24.1% | 58社 |
| 中国地方の全体 | 33.4% | 661社 |
| 全国 | 34.5% | 1万312社 |
島根の答えの内訳を見ると、「今後も活用する予定はない」が11.8%(全国は8.6%)、「分からない」が9.7%(全国は5.4%)で、どちらも全国より多くなっています。反対に「いまは活用していないが、今後の活用を検討している」は12.9%で、全国の14.2%を下回りました。
使うかどうかを決めかねている会社が、全国より少し多いと読めます(ここは筆者の見方です)。
なお、働く人1人ひとりの「仕事での利用」を数えた別の調査では、島根はさらに低い数字になっています。2つの数字の違いは、後の「島根のAI利用率をどう読むか」で説明します。
個人のAI利用率は58.8%、世界の中では低め
個人の利用は、会社より高い数字になります。総務省の「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表)によると、日本で生成AIサービスを「使っている(過去に使ったことがある)」人は58.8%でした。前の年の調査の26.7%から大きく増えています。
ただし、今回から15〜19歳が調査の対象に加わっており、20歳以上に限ると52.2%です。
同じ調査で、米国とドイツは75.6%、中国は93.6%でした。日本は、調べた4か国の中で最も低い結果です。使う頻度にも差があり、使ったことがある人のうち「ほぼ毎日」使う人は、日本が約3割、米国・ドイツ・中国は4割を超えていました。
厚生労働省の「令和8年版 労働経済の分析」(2026年9月公表)も、OECD(経済協力開発機構)のデータで日本を比べています。AIを使っている企業の割合(従業員10人以上)は、日本が9.2%(2023年のデータ)で、OECD諸国の平均20.2%の半分以下でした。直近3か月に生成AIツールを使った人の割合も、日本は26.7%(2024年のデータ)で、平均の36.8%を下回っています。
AIの利用率の推移:この2〜3年で大きく伸びた
AIの利用率は、ここ数年で急に伸びています。情報通信白書(ウェブ版)の個人の調査では、生成AIを使ったことがある人は、2023年度の調査で9.1%、2024年度で26.7%、2025年度で58.8%でした。2025年度の数字は15〜19歳を含み、20歳以上に限ると52.2%です。企業の担当者に聞いた調査でも、業務で生成AIを使う企業の割合は、前の年の調査から大きく上がっています。
会社の数字も同じ向きです。帝国データバンクが2024年6〜7月に行った「生成AIの活用状況調査」(2024年8月1日公表)では、生成AIを「活用している」企業は17.3%でした。こちらは4,705社が答えたインターネット調査で、聞き方も違うため単純には比べられませんが、2026年3月の34.5%まで、2年ほどで活用する会社がはっきり増えたことは読み取れます。
調査によってAIの利用率の数字が違う理由
「AIの利用率」で調べると、2割ほどから8割台まで、さまざまな数字が出てきます。どれかが間違っているのではなく、何を数えたかが違います。主な調査を並べると、次のとおりです(2026年10月1日時点で公表されているもの)。
| 調査(公表) | 数えたもの | 数字 | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 帝国データバンク(2026年5月) | 生成AIを業務で「活用している」企業 | 34.5% | 全国1万312社の回答 |
| 中小企業基盤整備機構の実態調査(2026年3月) | AIを導入している中小企業(全社と一部の業務の合計) | 20.4% | 生成AI以外のAIも含む。導入を検討中は18.6% |
| 中小企業白書 2026年版 | 人手を減らす投資の中で、AI活用に取り組んだ企業 | 30.3% | 省力化の投資をした企業の中での割合 |
| 情報通信白書(企業の調査)(2026年7月) | 何らかの業務で生成AIを使っている企業 | 86.4% | 企業の担当者に聞き、「わからない」を除いて計算 |
| 情報通信白書(個人の調査)(2026年7月) | 生成AIを使ったことがある人 | 58.8% | 1回でも使えば含まれる |
| 労働経済の分析(2026年9月) | AIを使っている企業(OECDのデータ) | 9.2% | 2023年のデータ。従業員10人以上 |
「会社」を数えるか「人」を数えるか
会社単位の調査は、社内で誰かが使っていれば「会社として活用している」と答えられます。人単位の調査は1人ひとりを数えるので、同じ地域でも数字が変わります。
「使っている」の範囲が違う
1回でも使ったことがあれば含める調査と、業務で「活用している」と答えた会社だけを数える調査では、前者が高くなります。「生成AI」だけを聞くか、画像認識などを含む「AI全般」を聞くかでも変わります。
調べた時期と、答えた人が違う
生成AIの利用は1年で大きく伸びているため、調査の時期が半年違えば数字も変わります。企業の担当者に聞く調査では、AIに関心のある会社ほど答えやすいといった偏りが出ることもあります(一般的な注意点です)。数字を比べるときは、同じ調査の中で比べるのが安全です。
答えた数が少ないと、数字が動きやすい
県ごと・業種ごとの数字は、答えた会社が数十社しかないこともあります。答えた数が少ないほど、たまたまの違いで数字が大きく動くため、1〜2ポイントの差で順位をつけるのは避けたほうが安全です。この記事では、表に答えた企業の数を添えています。
AIの利用率が最も高いのはどこ?地域・規模・年代別に比較
「最も利用率が高いのはどこか」を、地域・会社の規模・年代の3つの軸で見ていきます。
地域別:公表されている中では東京都の44.6%が最も高い
帝国データバンクは、同じ2026年3月の調査を、支店ごとに地域別でも公表しています。2026年10月1日時点で確認できた地域を、高い順に並べました。すべての都道府県がそろった順位ではない点に注意してください。
| 地域 | 生成AIを「活用している」企業 | 答えた企業の数 | 公表 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 44.6% | 1,835社 | 2026年6月 |
| 山口県 | 36.9% | 122社 | 2026年6月(中国地方版) |
| 九州・沖縄 | 35.9% | 983社 | 2026年5月 |
| 長野県 | 35.5% | 242社 | 2026年6月 |
| 広島県 | 34.7% | 236社 | 2026年6月(中国地方版) |
| 全国 | 34.5% | 1万312社 | 2026年5月 |
| 岡山県 | 32.9% | 152社 | 2026年6月(中国地方版) |
| 鹿児島県 | 32.7% | 107社 | 2026年6月 |
| 島根県 | 32.3% | 93社 | 2026年6月(中国地方版) |
| 神奈川県 | 31.4% | 564社 | 2026年5月 |
| 東海4県(愛知・岐阜・三重・静岡) | 31.3% | 1,097社 | 2026年5月 |
| 新潟県 | 29.6% | 226社 | 2026年5月 |
| 北海道 | 27.8% | 467社 | 2026年6月 |
| 鳥取県 | 24.1% | 58社 | 2026年6月(中国地方版) |
東京都が高いのは、大きな会社の本社が集まっていることが一因と考えられます。次の「規模別」で見るとおり、会社が大きいほど利用率は高くなるからです(筆者の見方です)。
一方で、同じ首都圏の神奈川県は31.4%で全国を下回っており、都会なら高いとは限りません。島根県の32.3%は、公表されている地域の中では中ほどの位置です。
規模別:従業員1,000人超は63.6%、5人以下は29.6%
帝国データバンクの全国調査の報告書(PDF)を会社の規模別に見ると、大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%で、規模が大きいほど高くなります。従業員の数で分けると、差はさらにはっきりします。
| 従業員の数 | 生成AIを「活用している」企業 |
|---|---|
| 5人以下 | 29.6% |
| 6〜20人 | 30.1% |
| 21〜50人 | 34.3% |
| 51〜100人 | 36.7% |
| 101〜300人 | 44.4% |
| 301〜1,000人 | 51.9% |
| 1,000人超 | 63.6% |
大きな会社ほど、IT担当者や情報を管理する部署があり、ルールづくりや社員の教育に人を割きやすいことが背景にあると考えられます(一般的な傾向です)。ただし後で見るとおり、使っている会社の中では、小さな会社のほうが「大いに効果が出ている」と感じている割合が高いという結果もあります。
年代別:15〜19歳は91.7%、60代は33.5%
個人の利用は、年代による差が大きくなります。総務省の情報通信白書によると、生成AIを使ったことがある人は、15〜19歳が91.7%、20代が78.2%で、年代が上がるほど下がり、60代は33.5%でした。米国と並べると、次のようになります。
| 年代 | 日本 | 米国 |
|---|---|---|
| 15〜19歳 | 91.7% | 81.7% |
| 20〜29歳 | 78.2% | 91.3% |
| 30〜39歳 | 56.3% | 87.5% |
| 40〜49歳 | 49.0% | 79.8% |
| 50〜59歳 | 44.2% | 62.5% |
| 60〜69歳 | 33.5% | 51.0% |
| 全体 | 58.8% | 75.6% |
日本は10代では米国を上回る一方、30代から上の年代で差が大きくなり、60代では米国の51.0%に対して33.5%です。若い世代の使い方は世界と近く、働く世代の中心から上で広がりが遅れていると読めます(筆者の見方です)。
仕事での利用も、年代が上がるほど低い
仕事で使っているかに絞った調査でも、同じ傾向が出ています。厚生労働省の労働経済の分析は、パーソル総合研究所の調査(全国の就業者が対象、2025年10月)を紹介しています。それによると、生成AIの業務利用割合は、男性が20代52.1%・40代37.1%・60代27.1%でした。女性は20代43.0%・40代26.3%・60代13.5%です。白書は、地方で利用率が低い背景の1つとして、高齢化が進んでいることを挙げています。
会社の中では、若い社員が先に使い始め、ベテランとの差が開くことがあります。帝国データバンクの全国調査でも、生成AIの悪い影響として「使いこなし格差の拡大」を挙げた会社が18.8%ありました。
業種別のAI利用率と、業種ごとの相性
次に、業種による違いと、その理由を仕事の中身から考えます。
業種別の利用率:サービス47.8%が最も高く、建設26.4%が最も低い
帝国データバンクの全国調査の報告書(PDF)で業種別に見ると、「サービス」が47.8%で最も高く、「金融」38.6%、「不動産」34.9%が続きました。低いのは「建設」26.4%と「運輸・倉庫」27.5%です。中国地方版でも「サービス」が48.2%で最も高く、「運輸・倉庫」は19.2%でした。
| 業種 | 全国 | 中国地方(答えた企業の数) |
|---|---|---|
| サービス | 47.8% | 48.2%(112社) |
| 金融 | 38.6% | 22.2%(9社) |
| 不動産 | 34.9% | 30.0%(20社) |
| 製造 | 33.0% | 33.0%(179社) |
| 小売 | 31.5% | 30.2%(63社) |
| 卸売 | 31.2% | 26.1%(142社) |
| 農・林・水産 | 30.0% | 40.0%(10社) |
| 運輸・倉庫 | 27.5% | 19.2%(26社) |
| 建設 | 26.4% | 33.7%(98社) |
中国地方は、業種によっては答えた企業が10社前後しかなく、1社の違いで数字が大きく動きます。業種の傾向は、全国の数字で見るのが安全です。
別の調査でも、業種の差ははっきりしています。中小企業白書 2026年版では、人手を減らす投資の中でAI活用に取り組んだ企業の割合が、情報通信業の71.7%に対し、建設業25.9%、製造業24.9%、宿泊業・飲食サービス業22.9%でした。働く人の業務利用を見たパーソル総合研究所の調査(労働経済の分析で紹介)でも、情報通信業の61.3%に対して、宿泊業・飲食サービス業は19.0%、医療・介護・福祉は22.1%と低くなっています。
AIと相性がよい仕事は「文章」と「調べもの」
業種の差の背景には、仕事の中身の違いがあります。帝国データバンクの全国調査で、活用している企業に主な使い道を聞くと、「文章の作成・要約・校正」が45.1%で最も多く、「情報収集」21.8%、「企画立案時のアイデア出し」11.0%が続きました。主にデータの集計や分析に使う会社は7.4%、プログラムを書く手伝いに使う会社は5.9%で、まだ少数です。
会社の規模や業種によって、使い道の重みも少しずつ違います。大企業は「文章の作成・要約・校正」が47.8%と集中しているのに対し、小規模企業は「情報収集」が25.2%で、全体の21.8%を上回りました。業種では「サービス」で「プログラミング支援」が13.3%と、全体の5.9%を大きく上回っています。小さな会社では、限られた人数で調べものや下書きの手間を減らす使い方が多いと読めます。
中小企業基盤整備機構の実態調査(2026年3月)でも、業務の分野ごとの導入率は、総務・管理部門が68.3%で最も高く、営業・販売・サービス部門が60.3%、経営・企画部門が58.5%で、製造・生産部門は34.9%でした。
つまり、机の上で文章や資料を扱う時間が長い仕事ほど、今の生成AIと相性がよいと言えます。反対に、現場で体を動かす時間が長い仕事や、移動しながらの仕事では、AIを使う場面を見つけにくくなります。帝国データバンクも、業務の特性や社内の体制の違いが活用の進み方に影響しているとみています。
相性を見分ける3つの質問
自社の仕事がAIと合うかは、次の3つの質問で整理すると分かりやすくなります(筆者の整理です)。
- 文字や言葉を扱う時間が長いか:メール、報告書、見積もりの説明、議事録など
- 下書きを人が直して仕上げられるか:AIの答えを人が確かめる前提で使えるか
- 間違ったときに取り返せるか:お客さまに出す前に確かめられるか、法律や安全にかかわる判断ではないか
3つとも当てはまる仕事から始めると、効果を感じやすくなります。AIで効率化しやすい仕事と、しにくい仕事の見分け方は、AIで業務効率化する方法でも詳しく整理しています。
現場の仕事が多い業種での使いどころ
利用率が低めの業種でも、報告書や社内の連絡などの事務の仕事はあります。業種ごとに、始めやすい使い方と気をつけることを整理しました(一般的な例です。自社の決まりに合わせて調整してください)。
| 業種 | 始めやすい使い方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 建設 | 日報や工事報告書の下書き、施主への説明文、安全書類の整理 | 図面や現場の写真、お客さまの情報を入れない |
| 運輸・倉庫 | 社内の連絡文、作業手順書の整理、求人票の文案 | 運転中は使わない。配送先の個人情報を入れない |
| 製造 | 作業手順書やマニュアルの整理、報告書の要約 | 設計図や取引先の情報を入れない |
| 小売・飲食 | 商品説明やPOPの文案、SNSの投稿文、口コミへの返信の下書き | 大げさな表現になっていないかを人が確かめる |
| 農・林・水産 | 報告書や申請書類の下書き、販売ページの文案 | 数字や制度の中身は、公式の情報で確かめる |
| 医療・介護・福祉 | 記録の要約、研修資料の整理 | 利用者の個人情報は、決められた仕組みの中だけで扱う |
筆者が相談を受けた林業の会社では、報告書づくりに時間がかかっていました。そこで、ChatGPTの「GPTs」(決まった指示や資料を覚えさせた、自分専用のChatGPTを作る機能)で、報告書づくり専用のチャットボットを作る方法を紹介しました(2025年2月の相談)。その後も使い続けているかまでは確かめていませんが、現場の多い業種でも「毎回同じ形の書類を作る仕事」から始めると取り入れやすくなります。この例は、AI活用事例の記事でも紹介しています。
AIの利用率が低いのはなぜ?調査から分かる5つの理由
日本や島根でAIの利用率が伸び悩む理由を、会社と個人の調査から5つに整理します。
① 使う業務がイメージできない
中小企業白書 2026年版(第2-2-92図)は、人手を減らす投資をした中小企業のうち、AIを業務で活用していない会社に理由を聞いています。
最も多かったのは「活用する業務がイメージできていない」の63.4%でした(3,888社の回答。帝国データバンクの調査をもとにした集計)。道具はあっても、「自社のどの仕事に使うか」が決まらないことが、最初の壁になっています。
② 推進する人材・ノウハウが足りない
同じ調査で2番目に多かったのは、「活用を推進する人材が不足している」の40.0%でした。帝国データバンクの全国調査の報告書(PDF)でも、懸念や課題として「専門人材・ノウハウ不足」を挙げた会社が41.3%あり、大企業46.4%、中小企業40.4%、小規模企業35.1%でした。
③ 正確さと情報漏れが心配
帝国データバンクの同じ調査で、懸念や課題の1位は「情報の正確性」の50.4%でした。
「情報漏洩のリスク」も33.5%あります。生成AIは、もっともらしい誤りを答えることがあるため、答えを確かめる手間や、社外に出してはいけない情報の扱いが心配になるのは自然なことです。
④ 社内ルールと事例の情報が足りない
中小企業白書の同じ調査では、「社内ルール・ガイドラインが整備されていない」が26.2%でした。中小企業基盤整備機構の実態調査でも、足りない情報として「成功事例や活用事例などの情報」を挙げた中小企業が83.3%、「適切なベンダーや製品を選定する情報」が79.8%に上りました。
⑤ 個人は「必要ない」「使い方がわからない」
個人で生成AIを使っていない人に理由を聞くと、「自分の生活や業務に必要ない」が42.4%、「使い方がわからない」が38.8%でした(総務省の情報通信白書、文章を作るAIについての質問)。米国では「使い方がわからない」は18.5%で、日本はこの理由を挙げる人が調べた4か国の中で最も多い結果です。
よくある誤解:「お金がないから使えない」
AIが広がらない理由として費用がよく挙げられますが、調査を見ると上位ではありません。中小企業白書の同じ調査で「必要な予算を確保できない」は13.8%、個人で「費用が高額である」は5.0%でした。無料や少ない費用で試せる道具も多く、壁になっているのは費用よりも「何に使うか」と「使いこなせる人がいるか」だと言えます。
島根のAI利用率をどう読むか:背景と、使い始める手順
ここからは、島根のAIの利用率の読み方と、これから使い始める会社の進め方をまとめます。
全国との差2.2ポイントは、誤差の幅の中
島根県の32.3%は、全国の34.5%より2.2ポイント低い数字です。ただし、島根で答えたのは93社で、1万312社が答えた全国とは数の重みが違います。
答えた会社が偶然入れ替わったとき、数字がどのくらい動くかを、統計の一般的な式でおおまかに計算してみます。93社で32.3%の場合、上下におよそ9.5ポイントの幅があります(√(0.323×0.677÷93)×1.96で約0.095。無作為に選んだ場合の目安です)。
2.2ポイントの差はこの幅の中にあり、会社単位では「島根は全国よりはっきり低い」とまでは言えません。
一方、働く人1人ひとりに聞いた調査では、島根の数字は低く出ています。厚生労働省の「令和8年版 労働経済の分析」が紹介するパーソル総合研究所の調査(全国の就業者が対象、2025年10月)では、生成AIの業務利用割合は、東京都の41.4%に対して島根県は19.2%でした。福井県の16.5%、新潟県の19.6%とともに、2割を下回る県の1つです。県ごとの答えた人の数は白書に書かれていないため、この数字にも幅があると考えて読むのが安全です。
2つを合わせると、「会社としては全国並みに使い始めているが、社内で使っている人はまだ一部」というのが、今の島根の姿に近いと考えられます(別々の調査を組み合わせた、筆者の見方です。調べた時期も対象も違います)。
島根で利用率が伸びにくい背景
地元紙の山陰中央新報(2026年9月9日)は、島根の数字が全国を下回った理由として、中小零細の企業が多く、専門の人材が少ないことなどを挙げています。これまで見てきたデータとも合っています。
- 会社の規模:全国でも、小規模企業の利用率は28.0%と低めです
- 年齢:労働経済の分析は、地方で利用率が低い背景の1つに高齢化を挙げています
- 業種:建設や運輸・倉庫など、現場の仕事が多い業種は全国でも利用率が低めです
なお、行政の側では導入が進んでいます。総務省の自治体における生成AI導入状況の調査(令和7年10月31日時点、全1,788団体が回答)では、生成AIを導入済みの団体は、都道府県と指定都市で100%、そのほかの市区町村で45.6%でした。島根県庁を含め、都道府県はすべて導入済みです。
一方で、使っている会社の手ごたえは強いものがあります。帝国データバンクの中国地方版では、生成AIを活用している中国地方の企業のうち85.5%が、業務への効果が出ていると答えました。全国調査でも、「大いに効果が出ている」と答えた割合は小規模企業が29.7%で、大企業の20.8%を上回っています。人手が限られる会社ほど、文章づくりや情報整理の時間が減る効果を感じやすい可能性がある、と調査はみています。
島根県内で、AI活用を相談できる会社や公的な窓口は、島根でAI活用を相談できる会社・機関のまとめで紹介しています。
会社でAIを使い始める4つの手順
利用率の数字を見て「うちもそろそろ」と感じたら、次の順で小さく始めるのが現実的です(一般的な進め方です)。中小企業の導入の流れは、中小企業のAI導入の始め方でも詳しく解説しています。
帝国データバンクも報告書のまとめで、使う業務の範囲をはっきりさせ、最終的な判断と確認は人が担う前提でルールを整えることが大切だとしています。情報の扱いのルールづくりと、AIが出した内容を確かめて直すための社内教育も欠かせない、としています。次の4つの手順は、この考え方に沿っています。
手順1:使う業務を1つだけ決める
最初は、「メールや報告書の下書き」「長い資料の要約」など、毎週くり返す仕事を1つ選びます。調査で最も多い使い道も、文章づくりでした。
手順2:入れてはいけない情報と、確かめ方を決める
お客さまの個人情報や取引先の秘密は入れない、AIの答えは人が確かめてから外に出す、といった決まりを、A4用紙1枚ほどで先に決めておきます。
手順3:2〜3人で1か月試し、かかった時間を比べる
いきなり全員に広げず、少人数で試します。試す前と後で、その仕事にかかった時間をメモしておくと、続けるかどうかを判断しやすくなります。
手順4:若手とベテランで教え合う場をつくる
年代によって使い慣れ方に差があるため、使えている人が短い使い方の例を紹介する場をつくると、社内で使える人と使えない人の差を広げずに済みます。
始める前に、次の項目を確かめておきましょう。
- AIに任せたい仕事を1つ書き出した
- その仕事に今かかっている時間をメモした
- AIに入れてはいけない情報を決めた
- AIの答えを誰が確かめるかを決めた
- 試す人(2〜3人)と期間(1か月など)を決めた
- 試した結果を社内で共有する日を決めた
AIの利用率についてよくある質問
日本のAIの利用率は何%ですか?
帝国データバンクの2026年3月の調査では、生成AIを業務で「活用している」企業は34.5%です。個人では、総務省の情報通信白書によると58.8%の人が生成AIを使ったことがあります。何を数えたかで数字が変わるため、調査の名前と対象を一緒に見るのがおすすめです。
島根県のAIの利用率はどのくらいですか?
会社単位では32.3%(帝国データバンク、2026年3月の調査、93社の回答)で、全国の34.5%をやや下回ります。働く人の仕事での利用では19.2%(パーソル総合研究所の調査、厚生労働省の労働経済の分析で紹介)で、全国でも低い県の1つです。
AIの利用率が最も高い業種はどこですか?
帝国データバンクの全国調査では「サービス」が47.8%で最も高く、最も低いのは「建設」の26.4%でした。調査によっては「情報通信業」が6〜7割と突出しています。
年齢によってAIの利用率は違いますか?
大きく違います。個人の利用経験は15〜19歳が91.7%、60代は33.5%で、年代が上がるほど低くなります。仕事での利用でも同じ傾向です。
日本のAIの利用率は、世界と比べて低いのですか?
比べ方によりますが、低めです。情報通信白書の個人の調査では、日本の58.8%に対して、米国とドイツは75.6%、中国は93.6%でした。OECDのデータでも、AIを使っている企業の割合は日本が9.2%(2023年のデータ)で、平均の20.2%を下回ります。
小さな会社でもAIを使う意味はありますか?
あります。帝国データバンクの調査では、生成AIを活用している会社の86.7%が業務への効果を感じており、「大いに効果が出ている」と答えた割合は、小規模企業のほうが大企業より高い結果でした。少人数で抱えている事務の時間を減らす使い方から始められます。
AIの利用率は、これから上がりますか?
確かな予測は公表されていませんが、上がる余地は大きいと考えられます。帝国データバンクの調査で「いまは活用していないが、今後の活用を検討している」企業は全国で14.2%、島根で12.9%でした。これらの会社がすべて使い始めた場合、全国は48.7%(34.5%+14.2%)、島根は45.2%(32.3%+12.9%)になる計算です。あくまで検討中の会社が動いた場合の目安です。
これらの数字は、いつの調査ですか?
帝国データバンクの調査は2026年3月に行われ、全国版は5月、中国地方版は6月に公表されました。パーソル総合研究所の調査は2025年10月、情報通信白書の個人の調査は2025年度の調査です。AIの利用は1年で大きく変わるため、2026年10月1日時点の情報として読んでください。
まとめ:AIの利用率から分かることと、次にすること
AIの利用率について、この記事の要点をまとめます。
- 企業のAIの利用率は全国34.5%、島根県は32.3%(帝国データバンク、2026年3月の調査)。個人は58.8%(総務省の情報通信白書)
- 数字は「会社か人か」「使っているの範囲」「調べた時期」で変わる。比べるときは同じ調査の中で比べる
- 最も高いのは、地域では東京都(44.6%)、会社の規模では従業員1,000人超(63.6%)、年代では10代・20代、業種ではサービスや情報通信業
- 利用率が低い理由の1位は「使う業務がイメージできない」。費用を理由に挙げる会社は多くない
- 島根は、会社単位では全国との差が誤差の幅の中。働く人単位では2割を下回り、社内での広がりがこれからの課題
読む人の立場ごとに、次にできることを挙げます。
- 島根・山陰の経営者の方:自社の仕事から「同じ形の文章をくり返し作る業務」を1つ選び、2〜3人で1か月試してみる
- AI導入の担当の方:社内で説明するときは、数字に調査の名前・時期・対象(会社単位か人単位か)を添える
- 個人でまだ使っていない方:メールの下書きや長い文章の要約など、失敗しても困らない作業から試す
- 数字を記事や資料に引用したい方:調査の名前、調べた時期、答えた数をセットで書く
さらに理解を深めるなら、次の点も確かめてみてください。
- 自社の業種・規模に近い会社の利用率(帝国データバンクの業種別・規模別の数字)
- 次の調査で、島根の数字がどう変わるか(答えた会社の数にも注意)
- 自社の中で「誰が」使っているか(会社として使っているかと、何人が使っているかの差)



